「世界」に存在する「事象」の「情報」を写し取り保存して、誤認させる技術[Ⓝ劣-28-70]。
この世の現象に付随して存在する「情報」を改変し、情報の改変を通じて現実の事象を改変する技術。
こういった技術のことを、魔法という[Ⓝ劣–]。 超能力の認知と、魔法を科学として捉えた現代魔法の開発を経て、迷信から科学へ発展し、伝説や御伽噺の産物ではなく現実の技術となっていった[Ⓝ劣-1-12,Ⓝ暗-1-27]。
魔法は、芸術や科学などの他分野と同様、才能ある一部の者だけが行使することができるものであり、その中でも特に高い適性を有している者だけがプロフェッショナルというレベルにまで熟達できる[Ⓝ劣-1-12]。
核兵器すら抑え込み、また核兵器よりも強大な実用性を有することもあるため、国家にとっては兵器であり力そのもので、各国で研究開発が進められている[Ⓝ劣-1-12・13]。魔法とは
魔法の定義
現代魔法学においては、魔法は「事象に付随して存在する情報体(エイドス)」を改変することによって、その本体である「事象」を改変する技術であると定義されている[Ⓝ劣-1-11]。魔法の一次的形態は、「情報の次元(イデア)」に魔法式を出力して、そこに記録されているエイドスを書き換える技術である[Ⓝ劣-1-11]。
エイドスは、現実に存在している物体や、現実に発生した事象などについて記述した情報のカタマリです。このカタマリは、物理次元(現実世界)ではなく、情報次元(イデア)に存在しています。
このカタマリの内容を、魔法を使って別の内容に書き換えると、書き換えられた内容が物理次元にも反映され、物体や事象の在り方が一時的に改変されます。これが、『魔法科高校の劣等生』における魔法の基本的な仕組みです。
エイドスとイデア
現代魔法学において、エイドスとは「「事象」に付随する情報体」を指す言葉である。「世界」にその事象が存在することの記録であり、「事象」が「世界」に記す足跡のことで、現代魔法の理論的基盤となっている[Ⓝ劣-1-11]。 イデアも現代魔法学の用語で、エイドスが記録されるプラットフォームのことを言う。「情報の次元」とも表現される[Ⓝ劣-1-11]。イデアは、「世界」そのものの情報体であり、エイドスが記録される場所であり、全てのエイドスを内包している「情報」のプラットフォームである[Ⓝ劣-2-191]。
九重八雲は「理の世界」「この世界と背中合わせの影絵の世界」と表現している[Ⓝ劣-9-192,10-177]。
たとえば、木が燃えて灰とガスになったときには、「木」のエイドスが「灰」のエイドスと「ガス」のエイドスに変化するとともに、「木が燃えた」という出来事が、事象のエイドスとしてイデアに記録されます。
『魔法科』の魔法では、「意識」と「無意識」が地味に重要なキーワードです。
普通の魔法師は、「無意識的に」対象のエイドスを認識しているのであって、「エイドスの細部」とか「構造」だとかは認識できていないものと思われます。
想子〈サイオン〉と霊子〈プシオン〉
想子と霊子は、いずれも超心理現象において観測される粒子で、物理的な作用は一切持たない非物質的存在である[Ⓝ劣-1-11・35]。
想子〈サイオン〉
サイオンは、「意思や思考を形にする粒子」「認識や思考結果を記録する情報素子」であるとされている[Ⓝ劣-1-11・35]。
起動式や魔法式、エイドスなどはサイオンで構成されており、これらはしばしばサイオン情報体と呼ばれる[Ⓝ劣-1-11]。より正確には、物質やエネルギーそのもの、その作用によって引き起こされる現象の種類やその変化、すなわち「事象」に応じて形成されるサイオンの構造体を、「サイオン情報体」と呼ぶようになった[Ⓝ暗-1-28]。
霊子〈プシオン〉
プシオンについては分かっていないことが多く、「意思や思考を産み出す情動を形作っている粒子である」という仮説が提案されている[Ⓝ劣-1-35]。
精霊や式神、パラサイトといったSB(心霊的存在)は、多くの場合プシオンで構成されたプシオン情報体である。このプシオンは、人の精神とも密接に関連している[Ⓝ劣–]。
なお、魔法の行使には通常、プシオンではなくサイオンが用いられる[Ⓝ劣-1-35]とされていたが、2097年の司波達也の発見により、魔法にはプシオンも使われていることが判明した(「事象干渉力霊子波理論」)。
「魔法」あるいは「超能力」の根本原理
魔法の本体は魔法式である[Ⓝ劣-24-46]。
魔法や超能力といった超心理現象は、「事象」のエイドスに貼り付けられた魔法式の情報から、「世界」が当該事象を「そういうものである」と誤解することによって現実のものとなる[Ⓝ劣-28-144]。
それゆえ、魔法式は「世界」と直に接している必要がある(「世界」に対して露出している必要がある)[Ⓝ劣-28-144]。
見方を変えると、魔法とはサイオンで構築された魔法式によってエイドスを書き換える技術であり、魔法による事象改変の本体は、サイオンが引き起こす現象そのものである[Ⓝ劣-28-147]。
魔法を行使すると、魔法によって改変された事象の情報とは別に、「魔法でエイドスを書き換えた」という情報がサイオンに記録される[Ⓝ劣-28-147・148]。
魔法の分類
現代魔法・古式魔法・超能力
魔法には、超能力の技術体系化によって生まれた現代魔法と、一部の者たちの間で古くから伝えられてきた古式魔法とがあり[Ⓝ劣-1-12]、それぞれ特徴・長所・短所がある。
ただし、超能力も現代魔法も古式魔法も「『情報』の改変を通じて『事象』を改変する技術」であり、そこに本質的な差はない[Ⓝ劣-3-292,26-142]。
ただし、大きな違いの一つとして、魔法は「意識しなければ使えないもの」「意識して無意識を働かせなければ組み立てられないもの」であるのに対し、超能力は「無意識的」に使えるものであることが挙げられる[Ⓝ劣-30-240]。
なお、一人の人間が超能力と魔法を兼ね備えることはできないはずとされている。「特定パターンの事象改変しかできない」力である超能力に用いられる精神機能を、「多様な事象改変に適用できるよう調整し直した」ものが現代魔法であるためである[Ⓝ劣-26-142]。
それゆえ、多彩な魔法と特殊な知覚能力(『マルチスコープ』)を両立させている真由美は、イレギュラーな存在と言える[Ⓝ劣-26-143]。
現代魔法
現代魔法は、魔法師の魔法演算領域内で構築した魔法式を、エイドスに直接投射する技術体系の魔法である[Ⓝ劣–]。 起動式システムとCADの開発によって、魔法の多様化が図られるとともに安定的な高速発動が実現されている[Ⓝ劣-1-24]。CADを用いた魔法では、CADの調整の良し悪しで起動速度が5~10割以上変動すると言われており[Ⓝ劣-1-208]、現代魔法師にとって非常に重要性が高い。
現代魔法では、魔法という現象を見掛け上の性質ではなく作用面から分類している。
具体的には、〔加速・加重〕〔移動・振動〕〔収束・発散〕〔吸収・放出〕の四系統八種に整理し、四系統魔法として体系化している[Ⓝ劣-1-230・231]。
四系統 | 八種 | (+)/(-) | 例 |
---|---|---|---|
〔加速・加重〕 | 加速系統 | (+) | 『アクセル』 物体を特定方向へ向けて加速する[©–] |
(-) | 減速系 | ||
加重系統 | (+) | 『プレス』 物体に圧力をかける[©–] | |
(-) | 加重を減らす | ||
〔移動・振動〕 | 移動系統 | (+) | 『ランチャー』 物体の移動先を指定する[©–] |
(-) | 移動させない魔法? | ||
振動系統 | (+) | 『ヒート』 物体の振動数を上昇させて直接加熱する[©–] | |
(-) | 振動数を下げる | ||
〔収束・発散〕 | 収束系統 | (+) | 『スモークボール』 煙を球状の一塊にする[©–] |
(-) | 物体を拡散させる魔法? | ||
発散系統 | (+) | 『ドライアップ』 水分を蒸発させ乾燥状態にする[©–] | |
(-) | 物質を凝縮・凝固させる魔法? | ||
〔吸収・放出〕 | 吸収系統 | (+) | 『ラストメーカー』 防錆処理に関わらず金属を錆びさせる[©–] |
(-) | 物質を還元する魔法? | ||
放出系統 | (+) | 対象物に粒子を付加する魔法? | |
(-) | 『スパーク』 小規模な空中放電を起こす[©–] |
ただし、次の3つについては体系化できていない[Ⓝ劣-1-231]。
分類 | 内容 |
---|---|
知覚系魔法 | かつて五感外知覚(ESP)と呼ばれていたもの[Ⓝ劣–]。 |
無系統魔法 | エイドスを書き換えることで事象改変を起こすのではなく、サイオンそのものを操作することを目的とする魔法[Ⓝ劣–]。 |
系統外魔法 | 系統に分類できない、精神的な現象を操作する魔法[Ⓝ劣–]。 系統外魔法の一つである精神干渉系魔法に対する適性の有無は、まず精神を情報体として認識できるかどうかで分かれる[Ⓝ劣-27-178]。 また、精神についても「事象が変化すれば情報が残る」という原則の例外ではない[Ⓝ劣-30-95]。 |
古式魔法
古式魔法は、古来より秘かに伝えられてきた魔法である。呪文・呪符・印契・魔法陣・魔法書・杖・祭壇など、伝統的な魔法技術・魔法具を用いて発動される[Ⓝ劣-1-24・68,11-256]。魔法式を魔法演算領域ではなく呪符などの魔法具の上で構築したり、エイドスを直接書き換えるのではなく精霊を介してエイドスに働きかけたりする点で、現代魔法とは異なっている[Ⓝ劣-3-292]。 発動速度の面では現代魔法に劣っている。だが、これは古式魔法自体が現代魔法に劣っているということではない[Ⓝ劣-4-206]。
たとえば精霊魔法では、精霊を介してエイドスの書き換えを行う。これによって手間は増え、速度や自由度も低くなるものの、事象改変に対するエイドス側の抵抗を受けづらい(=隠密性が高い)、少ない力で大規模な効果が得られるというメリットがある[Ⓝ劣-3-292・293]。
(こうした特性を活かして)古式魔法では、相手の五感を騙し、肉体の攻撃ではあり得ない奇襲で意表を突き、敵を精神的に崩してから決定打を叩き込む戦い方を得意としている[Ⓝ劣-26-272]。
こういった点を指して、達也は「古式魔法と現代魔法の間に優劣はない」「速度の面では現代魔法が圧倒的に勝っているが、知覚外からの奇襲ならば威力と隠密性で古式魔法が勝っている」と述べている[Ⓝ劣-4-206]。
超能力
超能力では、魔法とは違って「念ずる」だけで事象改変を起こすことができる[Ⓝ劣-1-24]。これは、超能力者は起動式やCADの補助なしに(「意識して無意識を動かす」という過程を必要とせずに)、直接魔法式を構築することができるためである[Ⓝ劣-?-?,19-49]。
このため、発動速度は現代魔法に勝っている[Ⓝ劣-2-101]。
その一方で、超能力は事象改変のバリエーションが少なく、また超能力者は速度を得る代償として限られた技能しか使えない、という短所もある[Ⓝ劣-1-24,26-142]。
その他の分類
魔法の中には、以上の分類の他に、現代魔法・古式魔法を問わず、その目的や発動の仕組み等によって以下のようにカテゴライズされているものがある。
戦闘用魔法・民生用魔法
魔法には、戦闘時に使用される戦闘用魔法と、業務や研究など戦闘以外において使用される民生用魔法とがある[Ⓝ劣-2-107]。
これらの魔法の工程は、戦闘用魔法では単一工程~五工程程度の単純なものが大半を占めるが、民生用魔法では一般に多段階で複雑なものが多い[Ⓝ劣-2-107]。
攻撃用魔法・防御用魔法
戦闘用魔法は、その用途によって攻撃用魔法と防御用魔法に区分される[Ⓝ劣–]。
同じ魔法でも、使い方によって攻撃用に区分されることもあれば、防御用に区分されることもある[Ⓝ劣–]。
たとえば、物体の運動ベクトルを反転させる『ベクトル反転術式』は、敵を対象にしてその移動方向を急反転させるように使えば攻撃用魔法になり、自身に向かって飛んでくる弾丸に対して行使すれば、弾丸を跳ね返す防御用魔法となる[Ⓝ劣–]。
障壁魔法
障壁魔法は、その名の通り障壁を作り出す魔法だが、その種類は非常に多様である。戦闘用魔法では『半球シールド』[Ⓝ劣–]や『反射障壁』[Ⓝ劣–]など、防御用魔法になるものが多いが、中には『攻撃型ファランクス』[Ⓝ劣–]のように攻撃に使える障壁魔法もある。
戦闘用以外では『想子シールド』[Ⓝ劣–]や「遮音障壁』[Ⓝ劣–]などが挙げられる。
対物魔法・領域魔法
魔法には、物体を対象として行使する対物魔法と、術者が指定した空間を対象として行使する領域魔法とがある[Ⓝ劣–]。
特定の空間領域を正確に認識することは難しいため、領域魔法は対物魔法に比べ一般に難度が高い[Ⓝ劣–]。
また、対象物の一部のみを指定してその事象を改変するには高い技術力が必要となり(情報体の部分変化技術)、これも領域魔法が高難度とされている理由である[Ⓝ劣–]。
仮想領域魔法
仮想領域魔法は、術者が指定した空間の性質を改変し、その空間内に侵入した物質・物体の性質を改変する仮想領域を作り出す魔法である[Ⓝ劣–]。具体例としては、『分子ディバイダー』や『射程伸長術式』などが挙げられる[Ⓝ劣–]。
前者は、指定領域内に侵入した物体の分子間結合を反転させる分子間結合力反転術式が作用する仮想領域を展開するもので、領域内に侵入した物体は分子間結合を解かれ、物体としての形を失う[Ⓝ劣–]。
後者は、射出された弾丸を加速させる術式が作用する仮想領域を展開するもので、領域内に侵入した弾丸はその慣性質量と加速度を改変され、通常よりも射程を伸長される[Ⓝ劣–]。
常駐型魔法
常駐型魔法はその名の通り、常時発動型の魔法のこと[Ⓝ劣–]。常に発動し続けなければ効果を発揮しない魔法を指す[Ⓝ劣–]。 『高周波ブレード』[Ⓝ劣–]や、トーラス・シルバーの『飛行術式』[Ⓝ劣–]などがある。
設置型魔法・遅延発動型術式・条件発動型術式
刻印魔法
感応性合金に刻んだ幾何学紋様にサイオンを流し込むことで発動する魔法[Ⓝ劣–]。紋様の形がそのまま魔法式の形を反映している?
対抗魔法
他者の魔法を無力化するための魔法を総称して対抗魔法と言う[Ⓝ劣-3-99]。
現代魔法・古式魔法両方に存在し、以下のようなものがある。
魔法の名称 | 魔法の概要 |
---|---|
領域干渉 | 自身を中心とした一定のエリアに対して、何の情報改変も伴わない、干渉力のみが定義された魔法式を作用させることで場を支配し、他者の魔法式の干渉をシャットアウトする[Ⓝ劣-2-27]。 |
情報強化 | 対象のエイドス可変性を抑制し、相手の魔法によるエイドスの改変を阻止する[Ⓝ劣-4-107]。 |
キャスト・ジャミング | サイオン波のノイズを発生させ、相手の起動式の展開や読み込みを阻害する[Ⓝ劣–]。 |
特定魔法のジャミング | |
「キャスト・ジャマー」によるジャミング | |
サイオン粒子塊射出魔法 | 相手が展開中もしくは読み込み中の起動式にサイオンの塊を撃ち込み、起動式を形成するサイオンのパターンを攪乱することで、効力のある魔法式の構築を阻害し、魔法を未発のまま霧散させる[Ⓝ劣-1-106]。 |
術式解体〈グラム・デモリッション〉 | 体内で圧縮したサイオンの砲弾を、イデアを経由せずに対象物へ直接ぶつけて爆発させ、そこに付け加えられていた起動式や魔法式などのサイオン情報体を吹き飛ばす[Ⓝ劣-4-220]。 |
術式解散〈グラム・ディスパージョン〉 | 起動式や魔法式などのサイオン情報体の構造を分解魔法によって破壊し、無秩序なサイオン粒子群に変える無系統魔法[Ⓝ劣-4-8,8-93]。 |
纏衣の逃げ水 | 自身の外見情報や自身のエイドスの座標情報を本体とは別の位置に作り出し、相手の魔法の照準を本体とは別の位置に向けさせることで、魔法式にエラーを起こさせて魔法発動を失敗させる[Ⓝ劣-9-232・233・267]。 |
仮装行列〈パレード〉 | |
倶利伽羅剣 | 魔法が発動中の対象に触れエイドスに上書きされた魔法式を破壊する、古式魔法で生み出した炎の剣[Ⓝ劣-15-228・229]。 |
術式斬壊〈グラム・スラッシュ〉 | 『術式解体』の亜種。イデアに存在する魔法式を、サイオンの刃を使用して斬ることで相手の魔法を無効化する[Ⓝ劣-32-2]。 |
戦闘級・戦術級・戦略級魔法
魔法は、その破壊規模などによって戦闘級・戦術級・戦略級などに区分される。
戦闘級魔法[Ⓝ劣–]
戦術級魔法[Ⓝ劣–]
魔法の名称 | 魔法の概要 | 使用者(所属) |
---|---|---|
ヘビィ・メタル・バースト | 戦略級魔法『ヘビィ・メタル・バースト』の有効射程や拡散範囲などをコントロールしたもの。 魔法兵器「ブリオネイク」を用いて発動する。 |
アンジー・シリウス(USNA) |
オゾンサークル | 高濃度のオゾンガスを一瞬で、大量に発生させる。 | ジャスミン・ウィリアムズ(イギリス) |
能動空中機雷〈アクティブ・エアー・マイン〉 | 疎密波を発生させる振動場により固体を脆弱化させて粉砕する。対象が人間なら全身の骨を砕かれ、血袋となって絶命する[Ⓝ劣-23-53]。 | エフィア・メンサー(EAND) |
戦略級魔法[Ⓝ劣–]
一度の発動で人口5万人クラス以上の都市を破壊する、または一艦隊を壊滅に追い込む魔法[Ⓝ劣-21-2,Ⓝ㊕-プラズマ-39]。
各国において、戦略核のような大規模破壊兵器と同等の扱いを受けていると思われる。
戦略級魔法には、以下のようなものがある。
魔法の名称 | 魔法の概要 | 使用者(所属国家) |
---|---|---|
ヘビィ・メタル・バースト | 重金属を高エネルギープラズマに変化させ、さらに電子をプラズマ雲の外に排出することで電気的斥力を増幅して全方位に放射する[Ⓝ劣–]。 | アンジー・シリウス(USNA) |
リヴァイアサン | 不明 | ローラン・バルト(USNA) |
エリオット・ミラー(USNA) | ||
トゥマーン・ボンバ | 対象エリアに酸水素ガスを発生させたのち点火する魔法式を、一瞬で大量に増殖させつつ(チェイン・キャスト)、各魔法式の発動タイミングを遅延発動によって合わせ、これを酸水素ガスへの点火を一斉に行うことで大爆発を起こす[Ⓝ劣-21-238・249・250]。 | イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフ(新ソ連) |
シムリャー・アールミヤ | 不明 | レオニード・コンドラチェンコ(新ソ連) |
霹靂塔 | 目標エリアの電気抵抗を断続的かつ不均等に引き下げると同時に、目標エリア上空で電子雪崩を引き起こすことで、落雷を断続的かつ広範囲に降らせる[Ⓝ劣-23-45∼47]。 | 劉雲徳(大亜連合) |
劉麗蕾(大亜連合) | ||
アグニ・ダウンバースト | 対流圏と成層圏の境界付近に、断熱圧縮によって大規模・高密度な空気塊を作り出し、高密度状態を維持したまま落下させ、熱と衝撃をまき散らす[Ⓝメ-2-104・105]。 | バラット・チャンドラ・カーン(インド・ペルシア連邦) |
ソム・チャイ・ブンナーク(タイ) | ||
深淵〈アビス〉 | 半径数十m~数kmの範囲の水面を球面状に陥没させる移動系魔法。一撃で一個艦隊を破壊する。地下水を対象に発動すれば、地上施設を倒壊させることもできる[Ⓝ劣-8-211]。 | 五輪澪(日本) |
シンクロライナー・フュージョン | 数km~数十kmほど離れた位置に高密度の水素プラズマ雲を2つ発生させ、両者を向かい合わせに加速し衝突させ、さらに圧力をかけ続けることで核融合反応を引き起こし、熱と衝撃波を発生させる[Ⓝ劣-21-45,31-232]。 | ミゲル・ディアスおよびアントニオ・ディアス(ブラジル)[Ⓝ劣-31-231] |
オゾンサークル | 高濃度のオゾンガスを一瞬で、大量に発生させ、相手を急性中毒による麻痺状態にする[Ⓝ劣-21-2]。 | ウィリアム・マクロード(イギリス) |
カーラ・シュミット(ドイツ) | ||
バハムート | USNAと第五研で共同開発されたものであることは判明しているが、詳細は不明。文脈から、「固体の形状への干渉」を行う術式であると思われる[Ⓝ劣-13-8]。 | アリ・シャーヒーン(トルコ) |
質量爆散〈マテリアル・バースト〉 | 物質の質量を、アインシュタイン公式に従ってエネルギーに変換する魔法。水1滴(50mg)を対象にした場合、TNT換算で1ktの熱量が発生する[Ⓝ劣-7-312]。 | 大黒竜也(日本) |
海爆〈オーシャン・ブラスト〉 | 『チェイン・キャスト』の技術によって『爆裂』を拡張した魔法。海上の広範囲に魔法式を展開し、水深3mまでの海水を一斉に気化させることで大規模な水蒸気爆発を引き起こし、艦隊を壊滅させる[Ⓝ劣-27-2・233]。 | 一条将輝(日本) |
氷河期〈グレイシャル・エイジ〉 | 『チェイン・キャスト』の技術によって『ニブルヘイム』を拡張した魔法。海上で使用した場合、直径20kmほどにも及ぶ氷原を作り出し、一撃で大規模艦隊を行動不能に陥れる[Ⓝ劣-31-2・241]。 | 司波深雪(日本) |
BS魔法
魔法としての技術化が困難な異能のことを、BS魔法という(Born Specialized magic、先天的特異魔法技能)。BS能力、先天性スキルなどとも呼ばれる[Ⓝ劣-3-55]。
他の魔法師には真似のできないものである場合や、真似できるものでも技術的なレベルで圧倒的に勝っている場合が多い[Ⓝ劣-3-55]。
その他の分類
以上の他にも、砲撃魔法、コンビネーション魔法、幻影魔法、結界魔法、儀式魔法、対妖魔術式、人体直接干渉魔法、魔法剣、群体制御、化成体を操る魔法等、多くの分類・カテゴリが存在している。
魔法の資質
魔法師が魔法を使うことができるのは、彼らが自身の精神に「魔法演算領域」という領域を持っているからである[Ⓝ劣-?-?]。魔法演算領域を持たない者は、魔法を使うことはできない[Ⓝ劣-?-?]。
また、サイオンを知覚し、制御する力がなければ、魔法を操ることはできない[Ⓝ劣-1-178]。
こういった魔法の資質を有する者は少なく、実用レベルで魔法を発動できる者となると、中高生なら年齢別人口比で1/1,000前後であり、魔法事故などでリタイアすることもなく成人後も実用レベルの力を維持している者は1/10,000以下で、非常に希少な存在である[Ⓝ劣-1-266]。
魔法と魔法演算領域
人の精神には、意識領域と無意識領域という2つの領域が存在する[Ⓝ劣-?-?]。
魔法師の場合は、無意識領域の中に魔法演算領域という特殊な領域を有している[Ⓝ劣-2-101]。(ただし、リミッター不全説によれば、魔法演算領域はあらゆる人間が有している)
魔法演算領域は、魔法を実行する情報体である魔法式を構築する領域であり、魔法師を魔法師たらしめている精神システムである[Ⓝ劣-1-68]。
(リミッター不全説によれば、魔法演算領域は「世界」の一部分だけを切り取って認識する、誰もが有している精神機能である)
魔法演算領域は無意識領域に存在するが故に、その作動には、意識の作用よりも無意識の作用が優先される[Ⓝ劣-2-28]。
したがって、無意識下で拒否している内容の魔法を意識的に実行しようとしても、魔法演算領域が無意識の作用に強く影響を受け、その魔法は発動しない結果となる[Ⓝ劣-?-?]。
魔法事故によって魔法を信じられなくなり、魔法が使えなくなるのは、無意識下で「魔法」そのものを拒否している結果だと推測されます。
魔法具
魔法の発動、すなわちエイドスの改変を行うために、様々な魔法具が使われている。
古式魔法においては、呪文や呪符、印契、魔法陣、魔法書、杖、祭壇などの伝統的な手法・道具が使われている[Ⓝ劣-1-24・68,11-256]。一方、現代魔法においては、魔法の発動に必要な起動式(魔法式の設計図となるサイオン情報体)をこれらの道具に代わって提供するツール「CAD」が使われている[Ⓝ劣-1-24]。
魔法師はこれらの魔法具を使って、魔法演算領域内、あるいは魔法具の上で魔法式(魔法を実行するサイオン情報体)を構築し、直接的あるいは間接的にエイドスの改変を行っている[Ⓝ劣-1-68]。魔法発動の手順
魔法発動の手順は、現代魔法と古式魔法とで違いはあるものの、どちらも同じ魔法であり、原則として行っていることは同じである[Ⓝ劣–]。
- 魔法を発動する対象を認識する。
- 呪符やCAD等の魔法具にサイオンを流し込み、(現代魔法においては魔法演算領域内で)魔法式を構築する[Ⓝ劣-1-68・104,]。
- 構築した魔法式を、イデアを経由して対象のエイドスに投射・固定し、エイドスの情報を書き換える(古式魔法の一つ・精霊魔法においては、精霊を介してエイドスの書き換えを行う)[Ⓝ劣-1-104・105,25-257]。
- 書き換えられたエイドスの内容に合わせて、事象が一時的に改変される[Ⓝ劣-1-105]。
魔法の開発
魔法の開発は、多くの場合、魔法師自身が自分に合った魔法を本能的・直感的・感覚的に編み出すことによって行われ、理論的に新しい魔法を構築できる魔法師は少ない。これは、魔法が無意識領域の作用に大きく依存しているためである[Ⓝ劣-2-30・31,22-49]。
また、無意識に使える魔法を後から理論づけすることは易しくとも、理論的に新しい魔法を作り出すことは困難である。これは、それが単なる既存魔法のバリエーションであっても、その魔法の構成と作動原理を完全に理解することが求められるためである[Ⓝ劣-2-31]。
魔法師が感覚的に創り上げた新魔法を起動式の形で論理的に記述し直す「コード化」の作業には、専門的な技術が求められる。これは一般に、魔法技能を共有するうえでのボトルネックになる[Ⓝ劣-22-49]。
「情報」とは何か
達也は、『分解』や『再成』を行使する際、その対象の情報体の細部を明晰に認識できていないにも関わらず、これらの魔法を行使し、実行できている[Ⓝ劣-?-?]。 響子もまた、電流や電圧、電磁波などを操って電子的な情報ネットワークに干渉する際、「電子の運動を機械言語に翻訳し、機械言語を人の言語に翻訳する」というようなフローを経ることなく、電子の運動を「意味のある「情報」」として認識することができている[Ⓝ劣-30-116]。こういった「情報」と「魔法」の関連については未だに分かっていないことが多いが、魔法、「事象」、「世界」といったものの本質の一端に触れているものと思われる[Ⓝ劣-30-119]。
2100年現在、真夜の命令に基づき、響子が情報ネットワークの本質解明に取り組んでいる[Ⓝメ-1-85]。
魔法発動の成功に係る諸要素
魔法を実行し、発動を成功させるには、以下のような要素が関わってくる。
サイオン保有量
サイオン保有量は、まだCADの性能が低く、魔法の発動に多くのサイオンを必要としていたころに重視されていた要素である[Ⓝ劣–]。現在では、CADの性能向上に伴ってサイオン消費量が低く抑えられた結果、ほとんど重要視されていない[Ⓝ劣–]。
ただし、『術式解体』のように大量のサイオンを必要とする魔法や、常駐型魔法のように長時間、連続的に発動し続ける必要がある魔法を実行する場合は、サイオン保有量によって魔法の成功が左右される[Ⓝ劣–]。
対象の認識
魔法を発動するには、発動の対象を認識しなくてはならない[Ⓝ劣–]。
対物魔法においては個々の物体が、領域魔法においては特定の空間が対象となる[Ⓝ劣–]。
一般に領域魔法が対物魔法より難度が高いとされている理由は、空間の特定領域を切り取って認識することが難しいためである[Ⓝ劣-21-74・75]。
認識能力
魔法師は、程度の差はあれ「情報」を近くする力を持っている(情報知覚能力)。達也や光宣の『精霊の眼』は、魔法師ならば誰もが持つこの知覚力の最上位バージョンである[Ⓝ劣-28-140]。魔法の射程距離
情報の世界であるイデアには物理的な距離ではなく、情報的な距離(認識の距離)が存在している[Ⓝ劣-21-246,31-86]。
そのため、イデアを経由しない『サイオン粒子塊射出魔法』や『術式解体』等を除くほとんどの魔法にとって、物理的な距離はあまり意味を持たない[Ⓝ劣–]。
魔法は、物理的な距離に縛られない。物理的な距離ではなく、術者が感じている「認識」の距離に影響を受け、対象物を近くに感じているほど発動しやすくなる[Ⓝ劣–,28-68]。(物理的にどれだけ離れていても)対象の位置情報を実感として把握できていれば、魔法は問題なく行使できる[Ⓝ劣-31-86]。
言い換えると、現にそこに存在する「距離」を飛び越えるためには、魔法に対する深い理解と強い確信(「誤った常識」を否定する強固な意志力)が必要となる[Ⓝ劣-24-268]。
一般に、魔法による砲撃を行う際は、対象に近づくほど対象を身近に感じることができ、より精緻な砲撃が行えるようになる[Ⓝ劣–]。
しかし、物理的にどれだけ遠く離れていても、認識の距離(情報的距離)が近ければ、魔法を発動させることができる[Ⓝ劣–]。
たとえば精霊魔法では、術者が精霊と対話することで対象を身近に感じることができるため、遠距離にある対象や隔離空間に対しても魔法を行使することができる[Ⓝ劣–]。
ただし、『術式解体』などの魔法は、本当に物理的な距離の制約を受ける。限界値は術者によるが、その距離を超えると途端にサイオン流が減衰し、サイオン情報体を破壊できなくなる[Ⓝ劣-28-68]。
部分変化技術
情報体の一部分のみを指定して、その事象を改変する「部分変化」には、高い技術力が必要となる[Ⓝ劣-21-74]。これは、情報体の「全体」を認識の対象から意識的に外し、その「一部分のみ」を認識の対象にしなければならないためである[Ⓝ劣-?-?]。例えば、達也の『部分分解』では、対象物のエイドスの全体は意識的に認識しないようにした上で、対象エイドスの構造情報の一部分のみを改変対象に指定しなければならない[Ⓝ劣-?-?]。
領域魔法では、無限に広がっている空間の一部のみを切り取って対象として認識しなければならない[Ⓝ劣-?-?]。『爆裂』を海水を対象に行使するときは、「海はどこまでも広がっている」という「実感」を排除し、特定領域のみを切り取って対象として認識しなければならない[Ⓝ劣-21-75]。
変数の制御と定数処理
変数と定数
現代魔法においては、一般に座標・強度(出力)・終了条件が変数に設定され、その他のファクターは定数に設定される[Ⓝ劣-1-104・211]。これらの変数は術者のイメージが反映されるもので、魔法式構築時に魔法演算領域で追加処理される[Ⓝ劣-1-211,3-134]。
定数処理
変数は、少なければ少ないほど、術者の演算処理の負担が軽減されて発動速度が向上する[Ⓝ劣-?-?]。このため、強度を定数として処理し、変数を減らすことも少なくない[Ⓝ劣-1-211]。
防御系の魔法では、自分を中心とした相対座標を定数化することも多い[Ⓝ劣-1-211]。
対象に直接接触する場合には、接触点を座標に設定することで座標を定数として処理するというテクニックもある[Ⓝ劣-1-211]。
このテクニックは、魔法競技のひとつ『マーシャル・マジック・アーツ』の基本技術にもなっている[Ⓝ劣-?-?]。
魔法の自由度と多変数化
変数が多いほど魔法の自由度は高くなり、多彩な魔法を使うことができる[Ⓝ劣-1-211]。ただし、変数が増えるほど演算負担は大きくなる[Ⓝ劣-?-?]。
それゆえ、多くの変数を制御する『多変数化』の技術は難度が高い[Ⓝ劣-?-?]。 達也は少なくとも4つは変数化することができ、鈴音の反応から考えると、ハイレベルな技術であると思われる[Ⓝ劣-1-181・182]。
座標と照準
魔法では照準をピンポイントに合わせることができ、これが魔法の持つ最大の優位点とされる[Ⓝ劣-2-180]。
対象の座標情報は、特に攻撃魔法においては起動式・魔法式の変数となることが多い[Ⓝ劣-?-?]。
それゆえ、魔法を行使する対象の座標を把握して照準を合わせる力は、魔法の発動において必須の技術である[Ⓝ劣-?-?]。
座標を把握できず、照準を合わせることができない場合は、魔法式を構築することはできない[Ⓝ劣-?-?]。
また、魔法式構築中に、対象が術者の視界から外れるなどして座標が把握できなくなった場合には、魔法式がエラーを起こし、魔法式になるはずのサイオン情報体は霧散する[Ⓝ劣-1-173・174]。あるいは魔法式を構築できても、それを目標の座標に投射・固定するまでの一瞬の間に術者が殺されると、魔法は未発のまま終わる[Ⓝ劣-25-257]。
また領域魔法では、対象が物体ではなく空間となるため、座標の認識と照準の設定が難しく、対物魔法よりも高い空間認識力が求められることが多い[Ⓝ劣-?-?]。
これらの難点を回避するため、予め座標を起動式・魔法式の定数にしておくこともある[Ⓝ劣-1-211]。
魔法の処理能力
起動式や魔法式など、魔法の実行に係るサイオン情報体を構築する能力のことを、魔法の処理能力と言う[Ⓝ劣-?-?]。ここで言う「能力」とは、「いかに速くサイオン情報体を構築できるか」という意味であり、このことから「処理速度」「構築速度」「速度」などとも呼ばれる[Ⓝ劣-?-?]。
サイオン情報体の構築速度ではなく、魔法そのものを発動する速度を指すこともあり、「発動速度」「実行速度」「速度」などとも呼ばれる[Ⓝ劣-?-?]。
処理速度が遅いと、事故や戦闘などの危機的状況において遅れをとることがある[Ⓝ劣-?-?]。
現代において特に重視されており、魔法師の国際評価基準における評価項目に指定されている[Ⓝ劣-1-189]。魔法発動から0.5秒以内に事象が現実を塗り替えることが、速度の一応の目安となっている[Ⓝ劣-31-240]。
事象干渉力
対象物の情報を書き換える強度のことを、事象干渉力と言う[Ⓝ劣-?-?]。
「干渉力」「干渉強度」「強度」などとも呼ばれる[Ⓝ劣-?-?]。
現代において特に重視されており、魔法師の国際評価基準における評価項目に指定されている[Ⓝ劣-1-189]。
事象干渉力の正体はプシオン波である。達也はそれをアークトゥルスの幽体との戦闘時に観測し、「魔法にはサイオンだけでなくプシオンも使われている」ことを知った[Ⓝ劣-28-75・76]。
達也はその後、この発見を2099年に「事象干渉波霊子波理論」として発表した[Ⓝ劣-32-281]。
魔法のキャパシティ
構築する魔法式などのサイオン情報体の規模のことを、魔法のキャパシティと言う[Ⓝ劣-?-?]。
「演算規模」「構築規模」「規模」などとも呼ばれる[Ⓝ劣-?-?]。
現代において特に重視されており、魔法師の国際評価基準における評価項目に指定されている[Ⓝ劣-1-189]。
魔法の持続時間と終了条件
不可逆的な変化を引き起こす魔法はあっても、永続的な効果を持つ魔法は存在存在しない[Ⓝ劣-18-200,32-43]。魔法には必ず有効時間に限界がある[Ⓝ劣-18-200]。
魔法の終了条件の定義は、魔法師の技量を評価する重要なファクターのひとつである[Ⓝ劣-18-201]。終了条件が明確に定義されていない魔法は、いつ効力が切れるかわからない状態で発動対象に残り続けてしまう[Ⓝ劣-18-200]。
結果として、複数の魔法を連携させて相手を攻撃する場合や、相手の魔法を防御したりする場合に、自分が想定している効果に影響する[Ⓝ劣-19-262]。
終了条件は、魔法の持続時間もしくは魔法の結果を定義することで定められる[Ⓝ劣-18-201]。魔法師が事象改変を意識するのは発動時のみだが、魔法は終了条件に該当するまで有効に作用し続ける[Ⓝ劣-28-148]。
実践においては後者(定義)が使われることが多いが、トーラス・シルバーの飛行術式によって前者も高く評価されるようになった[Ⓝ劣-18-201]。
魔法発動に伴う魔法的現象
想子光と想子の活性化
魔法師は、日常的にサイオン光を纏っている[Ⓝ劣-?-?]。このサイオン光は、卓越した魔法力を持っている者ほど強い輝きを放つ[Ⓝ劣-1-153・154,25-115]。
魔法師が臨戦態勢に入ると、魔法師の内側でサイオンが活性化し[Ⓝ劣-1-107,25-115]、より強いサイオン光を生じる[Ⓝ劣-1-107]。その活性度は、強い魔法であるほど高くなる[Ⓝ劣-25-115]。
魔法師とCADの情報的一体化
魔法の発動中、魔法師とCADの間には密接な情報的関係性が生じる。CADは情報的に魔法師の一部となり、魔法師はCADとともに「魔法」というシステムのパーツになる[Ⓝ劣-25-260]。
それゆえ、魔法の発動中にCADを破壊されるなどして、CADとの接続を強制的に断ち切られると、魔法師は魔法演算領域を通じて精神に強いダメージを受け、死に至るケースもある[Ⓝ劣-25-262・263,26-231]。CAD強制切断のダメージからの回復に要する期間は、達也いわく、過去の事例にあてはめれば10~20日間である[Ⓝ劣-26-232]。
同様の事例は他にもあって、たとえば将輝が『爆裂』で相柳を破壊した際には[Ⓝ劣-15-113]、術者の方術士は壮絶な死に顔をさらした[Ⓝ劣-15-118]。これは、方術士が用いていた傀儡式鬼を操る魔法では、魔法発動後も術式の本体と術者の精神がつながっており、「相柳」が受けた「破壊された」という情報が、そのまま術者の精神に「返された」ためである[Ⓝ劣-15-118・119]。
現代魔法ではこうした「情報の逆流」を防ぐため、魔法発動後には魔法式を魔法師から切断するようになっている[Ⓝ劣-15-118]。
余剰想子光・光波ノイズの発生
起動式の展開、およびそれに続く魔法式の構築・発動に伴い、使いきれずに余ったサイオンによる余剰サイオン光(「サイオン波」と呼ぶこともある)が発生する[Ⓝ劣-1-151]。余剰サイオン光が一定レベルを超えると、光子と干渉を起こして物理的な発光現象を伴うこともある[Ⓝ劣-1-151]。
これを光波ノイズという[Ⓝ劣-?-?]。
技巧に優れた魔法師ほど、生じる余剰サイオン光は少ない[Ⓝ劣-1-151]。
事象改変に対するエイドスの抵抗
魔法を行使すると、魔法式がエイドスに干渉する過程で、改変されまいとするエイドス側からの反作用が生じる。魔法師はこの反作用を感じとることで、魔法式がどのような効果を持つものであるか(魔法式がどのような改変を行おうとしているのか)を、直感的に理解する(読み取る)ことができる)(『魔法式の読み取り』)[Ⓝ劣-1-109,]。
また、魔法師はエイドスからの反作用の波紋を辿ることで、魔法発動時点における術者の位置を推測することができる[Ⓝ劣-?-?]。
魔法の持続時間と「世界」の修復力
通常、魔法の効果は永続しない[Ⓝ劣-?-?]。
これは、エイドスの復元力(外から書き換えられる前の、過去の自分に戻ろうとする力)が作用するためである(「世界」の修復力)[Ⓝ劣-?-?]。
魔法は効力を発揮している間ずっと、この「修復力」に抗って、一瞬一瞬、事象を改変し続けている[Ⓝ劣-28-148]。
魔法の相克現象
同一の対象に、同程度の干渉力の魔法式が複数投射され、かつ互いに矛盾する事象改変を起こすものであった場合、どの魔法式も事象改変を行うことができず、魔法は失敗する[Ⓝ劣-?-?]。これを魔法の相克という。「定義破綻による強制終了」と表現されることもある[Ⓝ劣-26-43,]。
この現象を逆利用した技術が『相克による魔法の無効化』である[Ⓝ劣-?-?]。
魔法技術
魔法の特性・特徴を利用・活用した、様々な技能・技術が存在し、以下のようなものがある。
魔法式の読み取り
情報体の部分変化技術
エイドス全体ではなく、情報体の一部分のみを書き換える技術[Ⓝ劣-21-74]。現代魔法においては高難度とされており[Ⓝ劣-2-261,21-74]、これは対象の認識が難しいためである[Ⓝ劣-?-?]。
治癒魔法
魔法の上書き
魔法の上書きは、一般的に悪手と言われている。これは、上書きの都度、魔法が効力を発揮するための事象干渉力が上昇していくためである[Ⓝ劣-28-150]。
ただし、まったく同じ結果をもたらす魔法であれば、重複発動しても要求事象干渉力の増大は起こらない[Ⓝ劣-28-150・151]。
魔法の息継ぎ
発動未完成魔法の途中終了
相殺による魔法の無効化
相克による魔法の無効化
CAD関連技術
技術の名称 | 技術の概要 |
---|---|
逐次展開 | これから使う魔法の魔法式の構築と、その次に使う魔法の起動式の展開を同時に進行させる技術。魔法を継続的に発動し続けることが可能となる[Ⓝ劣-2-188・189]。 |
マルチ・キャスト | 一つのCADで複数の魔法を同時に発動する技術。「多重発動」とも呼ばれる[Ⓝ劣-?-?]。 |
パラレル・キャスト | 複数のCADで異なる魔法を同時に発動する技術。「魔法の並列起動」などとも表現される[Ⓝ劣-?-?]。 サイオン波の干渉が起こりやすいため魔法が不発に終わることが多く、高難度とされる[Ⓝ劣-?-?]。 |
キャスト・ジャマー | USNA軍が開発した、魔法発動を阻害する装置。 『特定魔法のジャミング』と同じ原理で魔法式の構築を阻害するノイズを放つ[Ⓝ劣-?-?]。 |
警備・警戒システム関連技術
技術・装置等の名称 | 技術・装置等の概要 |
---|---|
想子レーダー | |
防御術式 | |
偽装解除法陣〈アンチ・ステルス・フィールド〉 |
その他の魔法技術
以上のものほど一般的なものではないが、他にもフラッシュ・キャストや想子信号化されたイメージを皮膚接触で伝達する技術、『乗積魔法〈マルチプリケイティブ・キャスト〉』、多種類多重魔法制御、魔法発動の兆候を捉える技術、魔法発動の兆候を隠す技術、チェイン・キャスト、「念」を利用する技術[Ⓝ劣-26-49]、事象に形を与え現象の操作性を高める技術[Ⓝ劣-26-141]など、様々な魔法技術が存在している。
魔法による戦闘
CADの操作
CADの登場により魔法の発動は高速化され、魔法師は銃器で武装した大勢の兵士と正面からやり合えるようになった。しかし、CADの操作という手間は、一瞬を争う場面で勝敗を分ける隙となっていた[Ⓝ劣-26-103]。
しかしこの問題は、FLTの完全思考操作型CADの登場によって解決され、CAD操作の隙は埋められた[Ⓝ劣-26-103]。
魔法の持続時間の極小化
ずっと作用し続ける魔法は探知しやすいが、最初の一瞬だけ作用する魔法は捉え難い。
これを利用して、戦闘における攻撃の成功率を高めることができる。
たとえば凶器を魔法で投擲する際、予め軌道を定義しておき、投擲の瞬間だけ魔法を行使すれば、魔法による逆探知(魔法式の読み取り、エイドス改変の痕跡追跡、世界が実行する修復過程の追跡、エイドス変更履歴の遡及など)の難易度を高めることができ、結果として攻撃の成功率が上がる[Ⓝ劣-30-280・281]。
飛行ユニットの登場
USNA海軍の潜水空母「バージニア」艦長、マイケル・カーティスによれば、「飛行歩兵や飛行小型車輌といった飛行ユニットは軍事的革命そのもの」であり、「飛行魔法によって戦争のやり方は大きく変わり、戦争における魔法師のプレゼンスはさらに高まる」という[Ⓝ劣-30-263]。騎兵にせよバイクにせよ、地上を移動するスタイルだと(移動能力の)制限が強いが、空を自由に飛べるならば、そうした制限は消滅する[Ⓝ劣-30-263]。
相対的に捉えれば、飛行歩兵の機動力は地上部隊の対応力を超えているという意味で「一瞬」である[Ⓝ劣-30-264]。
ましてやその飛行歩兵が著しく強力な戦闘ユニットであった場合、突然目の前に現れて戦況をひっくり返しかねないわけで、前線指揮官にとってそれは最上級の悪夢である。従来の常識は全く通用せず、一から対策を講じなければならない[Ⓝ劣-30-264]。
魔法の失敗
- 魔法師が突発的なストレスに見舞われて、魔法を途切れさせてしまうことは珍しくない[Ⓝ劣-28-250]。
たとえば、魔法によるダメージを受けた魔法師は、普通は冷静に魔法を構築することができなくなり、展開中の起動式や構築中の魔法式は霧散してしまう[Ⓝ劣-1-171]。
また、魔法式は魔法師が制御を手放せば霧散してしまうものである[Ⓝ劣-28-150]。裏返せば、制御を手放さざるように仕向ければ、魔法を失敗させることができる。 - 座標を把握できず、照準を合わせることができない場合は、魔法式を構築することはできない[Ⓝ劣-?-?]。また、魔法式構築中に、対象が術者の視界から外れるなどして座標が把握できなくなった場合には、魔法式がエラーを起こし、魔法式になるはずのサイオン情報体は霧散する[Ⓝ劣-1-173・174]。
- 魔法式を構築できても、それを目標の座標に投射・固定するまでの一瞬の間に術者が殺されると、魔法は未発のまま終わる[Ⓝ劣-25-257]。
- 同一の対象に、同程度の干渉力の魔法式が複数投射され、かつ互いに矛盾する事象改変を起こすものであった場合、どの魔法式も事象改変を行うことができず、魔法は失敗する。これを魔法の相克という[Ⓝ劣-?-?]。「定義破綻による強制終了」と表現されることもある[Ⓝ劣-26-43,27-264,]。
この現象への対策は、正規軍のような良く訓練された集団では厳しく守られていて、たとえば敵の魔法に対応する魔法は一つだけにするよう訓練されている[Ⓝ劣-30-288・290]。
魔法演算領域のオーバーヒート
魔法の過剰行使によって魔法演算領域の機能が損なわれる現象[Ⓝ劣–]。
肉体ではなく精神に関係するものだが、詳細は不明[Ⓝ劣–]。
過去、四葉元造[Ⓝ劣–]や桜井穂波[Ⓝ劣–]がオーバーヒートにより命を落とし、佐渡沖戦闘事件では一条剛毅がダメージを負っている[Ⓝ劣-21-85]。また、ベゾブラゾフが達也と深雪に向けて戦略級魔法『トゥマーン・ボンバ』を放った際には、桜井水波がこれを障壁魔法によって受け止め、その結果として魔法技能喪失の危機、そして瀕死の重体に陥った[Ⓝ劣-24-286,25–]。
また、十文字和樹など十文字家の者は、操る魔法の性質上オーバーヒートを起こしやすく、これにより魔法力を喪失することが多いらしい[Ⓝ劣–]。
オーバーヒート現象は、曖昧な定義で魔法を行使した場合[Ⓝ劣-24-282]、条件が充足されていない状態で無理に魔法を使い続けた場合[Ⓝ劣-28-159]に起こる。
たとえば水波は、どんな魔法に襲われているのかわからない条件下で、考えられる可能性を全て防ぎうる障壁魔法を構築し、オーバーヒートに陥った[Ⓝ劣-24-282]。
また達也は、光宣の『仮装行列』を攻略しようとして、条件が充足されていない状態で無理に『術式解散』を使い続けたところ、オーバーヒートの兆候を感じとっている[Ⓝ劣-28-159]。
剛毅も、「とにかく身内を守る」という意識の下、不慣れな多重障壁魔法を条件不十分な状況で行使し、オーバーヒートに陥っている。
オーバーヒートは魔法師の命を脅かすものであるため、四葉家や十文字家の魔法研究者が治療法の研究を行っている[Ⓝ劣-21-88・89]。
津久葉夕歌もその一人で、国立魔法大学大学院で研究を行っている[Ⓝ劣-21-88]。
戦略級魔法ではない抑止力としての攻撃用魔法
アビゲイルは、「効果範囲が狭く、威力が高い戦闘用魔法の開発」に取り組んでいる[Ⓝ㊕-プラズマ-40]。これは、魔法に対して「抑止力」としての役割を求めているためである[Ⓝ㊕-プラズマ-38]。 戦略級魔法は、威力も大きいが破壊規模も大きい。それゆえ、小規模な戦闘では使うことができない場合が多い。実際、アークティック・ヒドゥン・ウォーにおいては、戦略級魔法『リヴァイアサン』は使用されなかった[Ⓝ㊕-プラズマ-40]。このような小規模戦闘について、アビゲイルは「敵魔法師の防御障壁を派手に撃ち抜く魔法が抑止力になる」は述べている。実際の現場では、そのような魔法こそ「貴重な魔法師戦力を失う」という恐れを生み、「敵に戦闘続行を断念させることにつながる」ためである[Ⓝ㊕-プラズマ-41]。
これが、アビゲイルが言うところの「効果範囲が狭く、威力が高い戦闘用魔法」の意義であり、「戦略級魔法ではない抑止力としての攻撃用魔法」である。
そしてそれを体現した魔法が、FAE理論を利用した魔法兵器「ブリオネイク」による、戦術級『ヘビィ・メタル・バースト』である。
その他
- 魔法を放つ瞬間は、その魔法に対して無防備になる。それを逆手に取った戦術も存在する[Ⓝ劣-26-263]。
- 対抗魔法等によって魔法が強制終了されると、魔法を実行すべく用意された事象干渉力は霧散する。その際、一部は術者へと逆流する。
この事象干渉力、すなわちプシオン波の流れを追うことができれば、居場所を偽装している術者の位置を特定することも不可能ではない[Ⓝ劣-29-247]。
魔法の理論
魔法と物理法則
魔法とエネルギー
魔法のエネルギー消費
魔法は、情報の改変を通じて事象を改変する技術であるため、魔法の実行そのものにはエネルギーの消費を伴わない[Ⓝ劣-?-?]。
魔法とエネルギー保存則
魔法を用いると、エネルギー保存則に縛られることなく事象を改変することができる[Ⓝ劣-?-?]。
しかし、魔法がエネルギー保存則と無関係ということではない[Ⓝ劣-?-?]。
エネルギー保存則を破らないように組まれた魔法は、物理法則にとって比較的自然な現象であるため、より少ない干渉力で事象改変が実行可能となる[Ⓝ劣-?-?]。
エネルギー保存則の破れ
観測されている事実
余剰次元理論に基づくマイクロブラックホール生成・蒸発実験
エネルギー保存則の破れに関する達也の推測
FAE理論
「魔法で改変された結果として生じる事象は、本来この世界には無いはずの事象であるがゆえに、改変直後のごく短い時間は物理法則の束縛が緩く、それに続く事象改変が容易になる」という理論。日本語では「後発事象可変理論」と訳される[Ⓝ劣-26-241]。
アビゲイルが開発しリーナが使用している戦術級『ヘビィ・メタル・バースト』や、達也が開発し使用している『バリオン・ランス』は、この理論を応用した魔法である[Ⓝ劣-,26-241]。基本コード仮説
基本コード仮説は、魔法式の研究分野においてそれなりに広く支持されている仮説[Ⓝ劣-4-274]。 加速・加重・移動・振動・収束・発散・吸収・放出の四系統八種にそれぞれ対応したプラスとマイナス、計16種類の基本となる魔法式(基本コード)が存在していて、この16種類を組み合わせることで全ての系統魔法を構築することができる、という理論である[Ⓝ劣-4-274]。 達也いわく、実際には基本コードの組み合わせだけでは構築できない系統魔法が存在するので、この仮説は誤りだが、基本コード自体は存在する[Ⓝ劣-4-274]。2095年8月時点で見つかっている基本コードは加重系統プラスコードのみで[Ⓝ劣-4-273]、吉祥寺真紅郎が13歳のときに発見した[Ⓝ劣-4-129]。
加重系魔法の技術的三大難問
「汎用的飛行魔法の実現」「慣性無限大化による擬似永久機関の実現」「重力制御魔法式熱核融合炉の実現」という3つの課題は、まとめて『加重系魔法の技術的三大難問』と呼ばれている[Ⓝ劣-2-136]。
「汎用的飛行魔法の実現」については、2095年7月にトーラス・シルバーが開発した『飛行術式』によって解決された[Ⓝ劣-3-?]。
また、「重力制御魔法式熱核融合炉の実現」は、2096年4月の恒星炉実験で解決への道筋が明確になり[Ⓝ劣-12-306・313・319]、その後達也によって少なくとも2100年までには実用化されている[Ⓝメ-32-290]。
精神干渉系魔法の原理と起動式に記述すべき事項に関する仮説
『精神干渉系魔法の原理と起動式に記述すべき事項に関する仮説』は、2096年度の論文コンペにおいて、第二高校代表・九島光宜が発表した仮説[Ⓝ劣-15-306・307]。この仮説ではまず、「人間が対象を“能動的”に認識したとき、サイオン情報体が新たに形成されること」を観測データから明らかにし、このことから「人の意思(=精神)が物理次元に何らかの働きかけを行うためには、意思をサイオン情報体に変換する必要がある」ということを示した。
そのうえで、「精神活動によって形成されるサイオン情報体の特徴を考慮して起動式を記述することで、精神干渉系魔法の定式化の加速や、精神干渉系魔法を無効化する対抗魔法の開発が可能である」と述べ、「精神干渉系魔法も四系統魔法と本質的に同じものであり、精神が物理次元に関わる際に形成するサイオン情報体を改変する魔法式こそが、人の認識や能動的な意思を改変する精神干渉系魔法の正体である」と結論づけた[Ⓝ劣-15-307・308]。
『魔法科』の中では、「実体の次元」(物理世界)、「情報の次元」(イデア)の他に、「精神の次元」があるのではないか、という説がありますが、これは原作11巻98Pの描写から事実でしょう。
この説によれば、人の精神、事象から遊離した孤立情報体(精霊)、パラサイトなどは、この「精神の次元」を漂っています。
通常の魔法は、実体次元の物体や現象を改変するものですが、これはイデアに存在している物体や事象のサイオン情報体(エイドス)を書き換えることによって行われます。
ところで、精神干渉系魔法とは、人の意思や認識などに干渉する魔法です。
光宜の仮説によれば、これらの精神活動もまたサイオン情報体を形成しています。文脈から、「精神活動のサイオン情報体」は、「物体や事象のエイドス」と同等のものでしょうから、イデアに存在するのではないかと想像できます。
「“精神活動のエイドス”を改変する魔法」と捉えれば、どこか特別視されている精神干渉系魔法も、他の四系統八種の魔法と何ら変わるところはない、普通の魔法だと言えるでしょう。
そして、「どのような精神活動が、どのようなサイオン情報体を形成するのか」というデータを細かく集めていけば、望みの精神干渉系魔法を新規開発することも、その対抗魔法を創り出すことも、自由にできるようになるでしょう。
リミッター不全説
リミッター不全説は、調整体の魔法行使に関する「安全弁(リミッター)」に関する仮説[Ⓝ劣-25-62]。この説によれば、魔法演算領域は魔法師に特有のものではなく、人間一般の精神に備わっている機能である[Ⓝ劣-25-62]。
(これに関連して、遠上良太郎は「人の無意識に存在する、森羅万象の情報を取り込み、それを意識で認識できる形態に加工する領域を、魔法師は魔法演算領域と呼んでいる」と述べており[Ⓝキ-1-48]、どちらも魔法演算領域を「人間一般に存在する精神機能」と称している)
本仮説では、無意識領域には「リミッター」が備わっており、通常の人間(非魔法師)は魔法を使えないようになっている。しかし、稀に魔法に対して強い耐久力をもつ精神の持ち主(魔法師)がいて、そうした人々は魔法を使うことができる[Ⓝ劣-25-62]。
一般的な魔法師の魔法演算領域は、筋肉と同じく、使用することにより出力を増していき、魔法に対する精神の耐久力も向上していくと言う[Ⓝ劣-25-62]。
しかし調整体魔法師ではこのリミッターが機能しておらず、本来であれば徐々に解放されていくはずの魔法演算領域が最初から全解放されており、耐久力を超えた魔法を使えてしまうために精神が破損しやすく、それが肉体の生命活動に波及するがゆえに、調整体は生命力が不安定である、と考えられている[Ⓝ劣-25-62・63]。
事象干渉力霊子波理論
事象干渉力霊子波理論は、司波達也が2099年に提唱・証明した理論[Ⓝ劣-32-281]。 対抗魔法等によって魔法が強制終了されると、魔法を実行すべく用意された事象干渉力は霧散する。その際、一部は術者へと逆流する。この事象干渉力、すなわちプシオン波の流れを追うことができれば、居場所を偽装している術者の位置を特定することも不可能ではない[Ⓝ劣-29-247]。
魔法に係る社会・制度・文化
暮らしと魔法
魔法は、少なくとも平和に生活できる社会環境においては、現代の社会生活に必須のファクターではない。治安や国防、災害対応で間接的に魔法の恩恵を受けている国民は少なくないが、大多数の人々は魔法と直接の関係が無い生活をしている[Ⓝ劣-24-99]。
魔法師と人権
「魔法因子を保有している」というだけで、魔法師であってもなくても、出国制限や国際結婚の事実上の禁止といった、公式・非公式の様々な制限を受けている(日本に限らない)[Ⓝメ-1-67]。
こうした人権侵害に反抗する形で魔法至上主義運動が巻き起こり、FEHR〈フェール〉や新人類戦線、FAIR〈フェア〉などの組織が生まれている。
チャンドラセカールと達也も、魔法師の人権自衛組織・メイジアン・ソサエティを設立している。魔法技能の評価
魔法技能の評価は、多くの場合国際評価基準に基づいて行われる[Ⓝ劣-1-189]。
魔法科高校においても同様で、魔法実技の評価は国際評価基準に即して作られた実技評価基準によって行われている[Ⓝ劣-1-182・189]。
魔法のランク
日本における社会・制度・文化
日本魔法界
日本における魔法師の社交界は、日本魔法界と呼ばれる[Ⓝ劣-22-128]。日本魔法界においては、魔法師の社会は十師族を頂点とした序列・制度が定められている[Ⓝ劣-?-?]。
また、超能力の研究開始当初からの経緯によって、十師族は決して政治の表舞台には立たない[Ⓝ劣-2-267]、魔法師は早婚が求められる[Ⓝ劣-11-74]等の様々な文化・風習・社会的風潮が形成されている。
また、古来から古式魔法を伝えてきた古式魔法師は独自の文化・風習を形成しており、その一部の者たちは旧第九研における魔法師開発時の経緯があり、「九」の数字付きと対立関係にあるなど、複雑な派閥関係が存在している[Ⓝ劣-?-?]。
克人いわく、「日本魔法界は現在のところ十師族を頂点に纏まっているが、それを快く思わない者がいないわけではない」[Ⓝ劣-22-131]。魔法教育
中学校までの魔法教育
日本においては中学校までは、公立学校では魔法は教えない[Ⓝ劣-?-?]。魔法の素質を持つ子供は、公立の塾が放課後に魔法の基礎を手ほどきさせる[Ⓝ劣-?-?]。
この段階では魔法の優劣は評価せず、純粋に才能だけを伸ばし、魔法を生業とする道に進むだけの才能があるかどうかを、本人と保護者に見極めさせる[Ⓝ劣-?-?]。
一部の私立学校には課外活動の形で魔法教育を取り入れているところもあるが、魔法を成績に反映させないという点は徹底されている[Ⓝ劣-?-?]。
本格的な魔法教育は高校課程からとなる[Ⓝ劣-?-?]。
高校以降の魔法教育
魔法師は希少な存在であるため、それを教えられる教師の数も圧倒的に不足している[Ⓝ劣-1-22]。それゆえ魔法科高校においても、才あるものを伸ばし、劣るものは置いていかれるという、徹底した才能主義、残酷なまでの実力主義の世界となっており、教育機会の均等などという建前は存在しない[Ⓝ劣-1-13,]。
それを体現しているのが、第一高校などで採用されている一科・二科制度である[Ⓝ劣-?-?]。
魔法事故
魔法教育には、魔法事故はつきものである[Ⓝ劣-1-21]。
ノウハウの蓄積によって、死亡事故や身体に障碍が残るような事故はほぼ根絶されてはいるものの、魔法技能は魔法の失敗体験などの心理的要因によって簡単にスポイルされる[Ⓝ劣-1-22]。
魔法科高校においても、魔法事故によって魔法技能を喪失し、退学する生徒が毎年少なからず存在している[Ⓝ劣-1-22]。
市街地での魔法の行使
市民をいたずらに脅かさないために、警察が派手に魔法を用いて犯人を追う等、警察による魔法の使用はできる限り目立たないことが原則になっており、市民が魔法を目にする機会は警察よりも消防の方が遥かに多い(ただし阪神地域は除く)[Ⓝ劣-26-191・192]。
海外における社会・制度・文化
USNAにおいては、魔法を用いた派手な追走劇は、滅多に見られるものではない。多くの州では、一般人を心理的に脅かさないために、警察による魔法の使用はできる限り目立たないことが原則になっており、市民が魔法を目にする機会は警察よりも消防の方がはるかに多い[Ⓝ劣-26-191・192]。日本における魔法に関する法令等
魔法の行使一般に関して
学外における魔法の使用は、法令で細かく規制されている[Ⓝ劣-1-100]。
自衛目的以外の魔法による対人攻撃は、魔法科高校の校則違反(魔法使用に関する校則)であり、それ以前に犯罪行為である[Ⓝ劣-1-106]。
対人攻撃でなくとも、正当な理由なき魔法の使用は、刑事罰を伴う犯罪行為となる[Ⓝ劣-2-158]。
魔法は、起動するだけでも細かな制限がある。これらのことについては、魔法科高校の1年次1学期に学ぶ[Ⓝ劣-1-110]。
なお、魔法使用に関わる正当防衛の判定はかなりハードルが高い。建前論では自衛の範囲ならば魔法の行使は許されるが、「報道の自由」を盾に取られると、たとえ術者が未成年であっても、魔法の行使が合法だと認められる可能性はかなり低くなる[Ⓝ劣-24-53]。
系統外魔法の行使に関して
系統外魔法はその特殊な性質から、四系統魔法以上に厳しく使用が制限されている[Ⓝ劣-1-232]。中でも洗脳などに使用することもできる精神干渉系魔法は、使用条件が特に厳しくなっている[Ⓝ劣-1-232]。
魔法の殺傷性ランク
魔法師の服役
魔法師が犯罪を犯した場合、魔法師専用の刑務所に送られることがある[Ⓝ劣-22-235]。海外における魔法に関する法令等
USNA
USNAでも日本と同様、街中で勝手に魔法を使うことは法律で禁止されている。規制の程度は州によって異なるが、魔法を無許可で実際に行使することは各州で禁じられている[Ⓝ㊕-プラズマ-21]。
たとえばマサチューセッツ州では、公的・私的空間を問わず、第三者の有無を問わず、事前の許可なく魔法を行使することを禁じている[Ⓝ㊕-プラズマ-21]。
ただし、実際に発動させなければ、魔法式を構築しても犯罪にはならない[Ⓝ㊕-プラズマ-21]。
また、無系統魔法は「魔法かどうか」の区別が付きにくいこともあり、事実上黙認されている(無系統魔法を取り締まると、教会のミサまで規制の対象になってしまう)[Ⓝ㊕-プラズマ-22]。
反魔法主義と魔法至上主義
魔法は、平和に生活できる社会環境では必須のファクターではなく、大多数の人々は魔法と直接の関係が無い生活をしている。それゆえ、「罪が定かでもない」魔法師が迫害されても無関心を貫くことができ、無関心でいることに罪の意識を覚えない[Ⓝ劣-24-99]。
魔法に対する反発運動、および魔法の才能を有する魔法師に対する反発運動(反魔法主義運動)は、世界的に展開されている[Ⓝ劣-?-?]。
中でも大きな潮流として存在しているのが、「人間は人間に許された力のみで生きるべきだ」と訴える「人間主義」で、これはキリスト教の中でも異端とされる一部の者たちが生み出したものである[Ⓝ劣-?-?]。
日本においても「人間主義」運動は展開されているが、それ以前にも反魔法国際政治団体ブランシュが一高でテロ事件を起こしている(ブランシュテロ事件)[Ⓝ劣-?-?]。これらはいずれも、大亜連合が自国の利益のために起こした事件であったり、日本の魔法師壊滅を目論む顧傑が誘導したものであったりと、背後で糸を引く者によって誘導・拡大させられて生じている運動であった[Ⓝ劣-?-?]。
しかし、2095年秋の灼熱のハロウィンで『質量爆散』が、2097年3~7月にかけては『シンクロライナー・フュージョン』や『霹靂塔』、『能動空中機雷』、『トゥマーン・ボンバ』、『海爆』などの戦術級・戦略級魔法が立て続けに使用され、世界の反魔法運動はますます高まりを見せるようになった[Ⓝ劣-23-128]。ヨーロッパ、とくにドイツやフランスなどではマス・ヒステリーに近い状態に達しており[Ⓝ劣–,30-86]、魔法を使うと電撃を発する首輪の開発が政府主導で進められ、首輪の装着を魔法師に義務付ける法案についても議論されている[Ⓝ劣-30-86]。
こうした状況を受け、魔法を肯定する人々も現れる。とりわけディオーネ―計画[Ⓝ劣-23-128]と魔法恒星炉エネルギープラント計画は、魔法によって人類の平和な未来を作り上げる有力なものとして、世界中で議論を呼んだ[Ⓝ劣-25-125]。
また、(今のところ)合法的な手段で活動を行うFEHR〈フェール〉、非合法な手段も厭わない新人類戦線やFAIR〈フェア〉、国境を越えた魔法師の人権自衛および非魔法師との併存を謳うメイジアン・ソサエティ[Ⓝ劣-30-87・89∼91]など、反魔法主義に抗う様々な組織も登場している。
魔法の軍事的価値
魔法は、ある程度ではあるが物量に縛られない力である。それゆえ、魔法師が戦力を担うことで、小国でも大国の物量に対抗できるという面がある[Ⓝ劣-24-113]。核兵器や化学兵器などと違い、大規模な輸送手段を用意しなくても使えるというメリットもある[Ⓝ㊕-プラズマ-38]。
21世紀末、小国が大国に呑み込まれることなく存続できているのは、魔法という「廉価で高威力」な兵器のおかげである。もし魔法が存在しなければ、小国は大国の物量に対抗できず、世界は少数の大国に分割支配され、世界中で地域紛争が始まる恐れすらあると、達也は考えている[Ⓝ劣-23-117・118]。
その他
- 魔法には個性があり、同じ魔法を使って同じ効果が出ても、術者が違えばそのプロセスや痕跡に微妙な違いが現れる[Ⓝ劣-25-188]。
- 深雪いわく、「魔法は、魔法師にとって手足も同じであり、魔法を失うことについて悩まない人間はきっといない」[Ⓝ劣-27-51]。
- 劉麗蕾が「2種類の魔法に特化しており、CADを必要としない」という話を聞いた達也は、「(自分と同じようにCADなどの)補助手段を必要とせずに魔法を使いこなすのは、2種類が限度なのではないか」という考えを抱いた[Ⓝ劣-27-144]。
- 魔法は、肉体が無くとも、幽体やパラサイトのような精神体あっても行使できる[Ⓝ劣-28-35・61]。
- 一般に魔法とは、魔法師にとっては意識して組み立てるものではなく、自分自身の魔法であっても構造の細部は分からない。全体としてどのようなもので、どう働くかが分かるだけである[Ⓝ劣-28-152]。
- 魔法には不明な点も多い。たとえば『生体発火』という魔法は、生物の身体を発火させるまほうだが、不思議なことに生物の市外や生物を加工した素材には効果が無い。生木は燃やせるが、炭に火を点けることはできない[Ⓝ劣-31-195]。
- 「アナジェリア症候群」の体質を有しているレナ・シュヴァリーの経歴から、魔法の成長は肉体の成長に引きずられているのではないか、という見方がある[Ⓝメ-1-200]。