ヘビィ・メタル・バーストは、スターズ総隊長「アンジー・シリウス」が操る戦略級魔法[Ⓝ劣-8-8]。
威力の面では十三使徒の中でも最強クラスで、イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフの『トゥマーン・ボンバ』を上回る[Ⓝ劣-8-213,21-2]。戦略級『ヘビィ・メタル・バースト』
原理
『ヘビィ・メタル・バースト』は、重金属を高エネルギープラズマに変化させ、気体化を経てプラズマ化する際の圧力上昇と陽イオン間の電磁的斥力を更に増幅して広範囲にばらまく系統魔法[Ⓝ劣-11-29,21-2]。
発散・放出・収束・加速系統の複合魔法で、発散系で気化、放出系でプラズマ化、収束系で電子の円環状固定および陽イオンの球状配置、加速系で陽イオンの円盤状圧縮・電気的斥力による陽イオンの電子雲への放出を行う[来訪者編ADW-95,管補]。 原子を電離するだけでは、発生したプラズマ全体として見れば電気的に中性であり、このため斥力は生じない。(戦略級魔法としての威力を実現するためには)プラズマ化を維持したまま電子だけを先にプラズマ雲の外へ排出する必要がある[Ⓝ劣-11-30,管補]。排出された電子は、(魔法によって)円環状に固定される。これは、原子核を加速するための手段である[Ⓝ㊕星呼-192,管補]。
一方陽イオンは球状に配置されたのち、魔法によって縦方向に圧縮され円盤状となる。これによって陽イオン間の電気的斥力が増大する。ここで圧縮を解かれ、電気的斥力および円環状電子雲との電気的引力により、陽イオン群は爆発的に広がっていく[Ⓝ㊕プラズマ-58・59,Ⓝ㊕星呼-136]。
現象
この魔法を発動すると、高エネルギープラズマが、爆心地点から全方位に放射される[Ⓝ劣-11-30]。
その具体的な現象について、12歳のリーナがオーステナイト系ステンレス製の分銅を対象としてテストした際[Ⓝ㊕プラズマ-58・59]、および南盾島事変においてロケットランチャーを対象として発動した際[Ⓝ㊕星呼-136]には、以下のように記述されている[一部管補]。
過程 | 『メタル・バースト』試験時 | 南盾島事変 |
---|---|---|
① | 分銅が崩れて形を失い、火花を散らす雲(プラズマ塊)に変化した。 | ロケットランチャーが激しい放電と共に、丸ごとその形を失った。 |
② | 続いて、空中放電の光が「分銅だった物」を水平に取り囲む輪(分銅から強制分離された電子)を形成した。 | 全ての核外電子が原子核からはぎ取られ、激しく明滅するプラズマ雲を水平に取り囲む電光の円環(電子雲)が形成された。 この電子雲は(魔法によって)固定されていて、発光は高速で回転する電子流に衝突した空気分子の電離・再結合により生じたものである。 魔法の影響下にある電子の円環は、再結合することなく電子のみの状態で固定された。 |
③ | 次の瞬間には、電子を取り除かれた残り(核外電子を全て引き剥がされた鉄・クロム・ニッケルの原子核気体=陽イオンプラズマ)が、電気的斥力で拡散することなく、上下から押しつぶされて平たい円盤状になった(拡散しないのは魔法による拘束効果のため)。 | 次の瞬間には、電子を失い正の電荷のみを持つプラズマが、(魔法によって)電磁的斥力に逆らって上下方向から圧縮され、「電子の円環に囲まれた原子核の円盤」を形成した。 |
④ | こののち、水平方向の拘束が解除され、正の電荷を持つプラズマが、円環を形成していた電子雲目掛けて猛スピードで飛び出し、水平全方位に飛び散った。 | 原子核円盤が電磁的斥力にブーストされ、水平に、一斉に、数百km/sの速度で拡散した。 |
⑤ | プラズマは電離と(電子との)再結合を繰り返し、高温の衝撃波を形成した。 | 原子核が電子の円環に衝突し、瞬間的に再結合が起こるものの、陽イオンの運動エネルギーと、電子が強制分離されていたことにより生じていた位置エネルギーによって再度電離する。 これを繰り返し、エネルギーを放出しながら、原子核と電子の圧倒的質量差により、プラズマは円環の半径を急速に広げていった。 |
画像 | なし |
補足
- 『ヘビィ・メタル・バースト』の破壊力は、質量数が大きい、重い原子核を高速飛散させることで成立している[Ⓝ㊕星呼-192・193]。
- 魔法式構築処理の負荷は「ブリオネイク」を用いる場合の方が上だが、要求干渉力はこちらのほうが大きい[Ⓝ㊕プラズマ-57]。
- 魔法の規模、速度、及びこの「プラズマ化を維持したまま電子だけを排出する」というプロセスは、(2096年時点では)アンジー・シリウスにしか実現できていない[Ⓝ劣-11-30,管補]。
戦術級『ヘビィ・メタル・バースト』
戦術魔法兵器「ブリオネイク」を使用する場合には、出力および射程を自由にコントロールすることができる。その威力は、最大で戦艦の主砲に匹敵する[Ⓝ劣-10-287]。
現象
(戦略級『ヘビィ・メタル・バースト』との現象面における違いは)「全方位に放射される」か「指向性を持つビームになる」かという点にある。「ブリオネイク」使用時には、収束される(指向性を持つ)だけでなく、有効射程(拡散範囲)もコントロールすることができる[Ⓝ劣-11-30,管補]。
これだけの速度で実体物(プラズマ)が移動するならば、希薄なガスであっても強い衝撃波が発生するはずだが、実際には生じない。これは、あらかじめ「(プラズマビームの)通り道」が作られているためである[Ⓝ劣-11-31]。
なお、この「通り道」は作らないようにすることもできる。その場合、射線に沿って衝撃波が発生し、周辺に被害を与える[Ⓝ劣-11-45]。
「ブリオネイク」で生成したプラズマビームは、リーナが定義したとおりに走る。収束・拡散・屈曲は思いのままに行える[Ⓝ劣-27-257]。
原理
基本的には戦略級『ヘビィ・メタル・バースト』と同じ。より細かい部分については「ブリオネイク」およびFAE理論を参照。
補足
12歳当時のリーナにとって、この魔法の処理は重かった。事象改変の空間的・時間的な広がりはそれ程大した規模ではなかったが、事象改変は深かった。これは、世界の基礎となる物理法則をねじ曲げるために、相乗的な効果を持つ魔法を幾重にも重複発動しようとしたためである[Ⓝ㊕プラズマ-44]。
対策
『ヘビィ・メタル・バースト』は、重金属原子を対象として行使する魔法である。したがって、対象となっている重金属原子を重金属原子でないものに変換してやれば、定義破綻によって無効化することができる[Ⓝ㊕星呼-191∼193]。
また、「ブリオネイク」を用いた戦術級『ヘビィ・メタル・バースト』に対しては、プラズマの「通り道」の生成を察知し、射線から身を躱すという方法もある[Ⓝ劣-11-32]。
開発の経緯
開発者はアビゲイル・ステューアット[Ⓝ劣-32-119]。
『ヘビィ・メタル・バースト』は、『ムスペルスヘイム』を「開放型」の軍事魔法に変える、というコンセプトで開発された。ここで開放型の魔法とは、「その効果を限定空間に閉じ込める魔法(閉鎖型)」に対して「限られた領域に閉じ込めず拡散させる魔法」という意味合いである[Ⓝ㊕プラズマ-37・55,管補]。
アビゲイルは当初、戦略級魔法の開発を目指していた。しかし(『ヘビィ・メタル・バースト』を)発動させられる魔法師が見つからなかったために「ブリオネイク」を製作した[Ⓝ㊕プラズマ-55,管補]。
「ブリオネイク」による戦術級『ヘビィ・メタル・バースト』は、戦略級よりも威力を制限し、難易度を下げたものである。これは、大規模魔法が使えない局地戦などのシーンを想定した、狭い範囲・限られた対象に高い威力を集中させるもので、その目的は敵魔法師の防御障壁を派手に撃ち抜くことで敵の戦意を挫くことにあった[Ⓝ㊕プラズマ-39∼41・55]。
なお、元々は『メタル・バースト』という名前の魔法だったが、テスト時に予想を上回る威力を見せたため、「ヘビィ」を冠した[Ⓝ㊕プラズマ-55・59]。
この時点では「戦術級魔法」という判断だった[Ⓝ㊕プラズマ-63]が、その後「魔法少女」作戦において実戦テストを行ったところ、戦略級の威力(破壊規模直径2km超)であることが判明。これはリーナのスターズ入り、及び「十三使徒」入りの決定打となった[Ⓝ㊕プラズマ-70∼73]。
また、開発者であるアビゲイルもスターズ顧問となった[Ⓝ㊕プラズマ-72,]。
発動履歴
1回目
日時
2092年(日付は不明)[Ⓝ㊕プラズマ-42∼47]
状況
ショーマット魔法研究所にて、『メタル・バースト』(威力制限版)の試験[Ⓝ㊕プラズマ-42∼47・55]魔法の対象
「ブリオネイク」試作器内の銅粉末[Ⓝ㊕プラズマ-41]使用CAD
「ブリオネイク」試作器[Ⓝ㊕プラズマ-41・55]
2回目
日時
2092年(日付は不明)[Ⓝ㊕プラズマ-54∼59]
状況
ショーマット魔法研究所にて、本来の『メタル・バースト』の試験[Ⓝ㊕プラズマ-42∼47]魔法の対象
オーステナイト系ステンレス製の分銅[Ⓝ㊕プラズマ-58]使用CAD
アサルトカービン形態特化型CAD[Ⓝ㊕プラズマ-56]被害
実験室内が一部損壊
3回目
日時
2092年(日付は不明)[Ⓝ㊕プラズマ-65∼72]
状況
ボストンサウスチャンネルにて、「魔法少女」作戦の一環で実行[Ⓝ㊕プラズマ-66]魔法の対象
敵工作員が使用していた小型船舶の機関部[Ⓝ㊕プラズマ-70]
使用CAD
アサルトカービン形態特化型CAD[Ⓝ㊕プラズマ-65]被害
破壊規模直径2kmの攻撃により、大量の魚が感電[Ⓝ㊕プラズマ-71]
4回目
日時
2096年2月15日[Ⓝ劣-10-,11-]
状況
司波達也との戦闘において戦術級レベルで行使[Ⓝ劣-10-,11-]魔法の対象
「ブリオネイク」内の重金属粉末[Ⓝ劣-11-]使用CAD
「ブリオネイク」[Ⓝ劣-11-]
被害
- 千葉修次が感電[Ⓝ劣-10-]
- 司波達也が右腕を喪失[Ⓝ劣-11-]
5回目
日時
2096年3月30日[Ⓝ㊕星呼-134∼138]
状況
南盾島・東岸防衛陣地を戦略級レベルで攻撃(南盾島事変)[Ⓝ㊕星呼-136]魔法の対象
東岸防衛陣地の中央ロケットランチャー1基[Ⓝ㊕星呼-136]
使用CAD
小銃形態特化型CAD[Ⓝ㊕星呼-136]被害
- 東岸防衛陣地が壊滅[Ⓝ㊕星呼-137]
- 電磁波障害が発生[Ⓝ㊕星呼-137]
6回目
日時
2096年3月30日[Ⓝ㊕星呼-190∼193]
状況
南盾島・南方諸島工廠を戦略級レベルで攻撃[Ⓝ㊕星呼-191]魔法の対象
南方諸島工廠付近に駐車している大型装甲車[Ⓝ㊕星呼-191]
使用CAD
小銃形態特化型CAD[Ⓝ㊕星呼-190]被害
なし(司波達也の『大深度雲散霧消』発動に伴う定義破綻により失敗)[Ⓝ㊕星呼-192・193]
その他
- 「ブリオネイク」を用いた『ヘビィ・メタル・バースト』には、(プラズマの移動に)ローレンツ力が用いられているらしい[Ⓝ劣-14-93,管補]。
- 戦略級『ヘビィ・メタル・バースト』は、重金属がある程度の塊で存在していれば十分な威力を示す。起伏が激しい地理条件下では効果が限られ、この点で『オゾンサークル』や『アグニ・ダウンバースト』よりは自由度が低いが、『リヴァイアサン』よりは高い。威力や発動速度などの他の条件を加味すれば、戦略弾道ミサイルに代わる抑止力に適した魔法だと言える[Ⓝ劣-24-215・216]。
- 南盾島事変までは、USNAが『ヘビィ・メタル・バースト』を実戦で使ったことは無かった(少なくとも知られてはいなかった)。戦略級魔法の中でもずば抜けた破壊力を持っているが故に、USNAは使われない抑止力として『ヘビィ・メタル・バースト』を扱ってきた[Ⓝ㊕星呼-138]。
- 十文字克人は、南盾島事変での『ヘビィ・メタル・バースト』について「『質量爆散』に匹敵する、世界を深く揺るがす波動、世界の根幹に踏み込む事象改変」と述べている[Ⓝ㊕星呼-139]。
- 戦略級のレベルで発動すると、電磁波障害を引き起こすことがある[Ⓝ㊕星呼-145]。
- 『ヘビー・メタル・バースト』[Ⓝ劣-32-119]または『ヘヴィ・メタル・バースト』[Ⓝ㊕プラズマ-59,Ⓝ㊕星呼-71]などの表記ゆれが散見される。
- 『ヘビィ・メタル・バースト』発動時には、一定レベルを超えた電磁波を遮断する対電磁波防御魔法が同時に展開される[Ⓝ㊕プラズマ-45∼47]。