情報体次元〈イデア〉

情報体次元〈イデア〉は、現代魔法学において個別情報体〈エイドス〉が記録されるプラットフォームのこと[Ⓝ劣-1-11]

森羅万象の情報を記録する「世界」そのものの情報体であり、全てのエイドスを内包している「情報」のプラットフォーム[Ⓝ劣-2-191,6-76]

あらゆる存在物の情報体を包含する巨大情報体[Ⓝ劣-3-291]

九重八雲は「ことわりの世界」「この世界と背中合わせの影絵の世界」と表現している[Ⓝ劣-9-192・193,10-144]

名称は、ギリシア哲学の用語に由来する[Ⓝ劣-1-11]

イデアとエイドス

イデア

現象には情報が伴い、現象に伴う情報はイデアに記録される[Ⓝ劣-10-116]

この世界に実体を持って存在する限り、イデアにエイドスを刻まないものは無い[Ⓝ劣-4-249]

言葉情報体としてイデアに刻まれる[Ⓝ劣-13-309]

エイドス

エイドスとは、世界情報イデアの中において、ある事象・実体を他の事象・実体から区別する情報ユニットである[Ⓝ劣-6-76]

個々のエイドスは森羅万象の情報であり、イデアはそのプラットフォームである。四葉家では、「イデアの中でエイドス同士を結び付けている情報ネットワークが存在していて、その解明は魔法の本質を理解するための重要な鍵となるはずだ」と考えられており、研究が進められている(『情報ネットワークの本質解明』[Ⓝ劣-30-119,Ⓝメ-1-85]

エイドスがイデアに内包されることは分かっているが、イデアやエイドスそのものが真に何処にあるのかは分かっていない[Ⓝ劣-10-80]

とは言え、この世界から独立した異世界があるわけではなく、この世界とは表裏一体の関係にあるとする仮説が主流となっている[Ⓝ劣-28-72]

サイオンと「情報」

事象には情報が伴い、この情報は想子に刻まれる。これは想子自身が引き起こす現象にも当てはまり、何かが変化すれば、そこには必ず「変化した」という情報が痕跡として残る。これは魔法という「情報を操作する技術」であっても同じで、痕跡情報を打ち消す情報操作もまた、情報を痕跡として残す。したがって魔法による事象改変の情報とは別に、魔法でエイドスを書き換えたという情報が残る。「改変した」という情報には主体と客体が含まれ、「何が」「何を」改変したのか、という情報が刻まれる[Ⓝ劣-19-57,28-147∼149]

純粋な思考情動世界に直接影響するものではないため、イデアに痕跡は残らない。しかし、精神が引き起こす現象は、魔法と同様、この世界に影響するものであればイデアに記録が残る。少なくとも系統外魔法として知られる事象、系統外魔法で再現可能な事象は、確実にその履歴を残す[Ⓝ劣-30-95]

イデアにおいては、「複数の物質が同時に同一座標に存在することはできない」などという制約は無い。イデアに存在する情報体に、物理的なアロケーション(割り当て・分配)の制限はなく、複数の情報が重なって存在する[Ⓝ劣-10-143]

情報的な距離

「情報的な距離」とは何か

イデアには距離も広さもない。物理的にどれほど離れていても、観測対象が何処にあるのか分かっていれば、時間差が無いという意味で同時に、かつ詳細に観測できる。逆に、手が届く場所にある物体・現象でも、「そこにある」「そういうものがある」と分かっていなければ、情報次元では観測できない[Ⓝ劣-28-145]

同様に、イデアを認識する知覚力にも、物理的距離は直接の障碍とならない。情報の世界で対象を特定することができれば、どれだけ物理的に離れていても「視る」ことができる[Ⓝ劣-6-215]

情報的な距離と魔法

イデアには物理的な距離は存在しない。このため、魔法にとって物理的な距離はあまり意味を持たない。しかし人間は五感に縛られ、経験に縛られるため、物理的な距離が遠ければ「遠い」と認識してしまう。この認識上の距離・・・・・・が魔法にとっての「距離」となり、これが遠くなればなるほど魔法は効き難くなる。遠くのものに魔法を掛ける秘訣は対象物を近くに感じる・・・・・・ことである。たとえば精霊魔法では、精霊意思を通わせることで精霊を「近く」に感じることができる。これによって物理的な距離を飛び越えやすい[Ⓝ劣-4-242・243]

縁・因果

名前とは実体の象徴であり、名前を口にすることは実体を特定することでもある。親しい人物とは精神的な距離が近い=「縁」のある人物であり、人物の名前を基点とし、固有名詞とその行動・状態を言葉にすることで、魔法の対象にフォーカスを合わせることができる[Ⓝ劣-6-158]

事象と事象の関連性、情報的なつながりをたどることで、何処にあるか分からないもの、正体が判明していないものの情報に到達することは、原理的には不可能ではない。しかし世界には時間が存在し、物質体次元の事象は時々刻々変化し、これに伴い情報も更新されていく。時の流れの中に積み重なった過去の情報を閲覧できない限り、情報的な関連性だけで所在不明の「情報」を探り当てることはできない[Ⓝ劣-28-145]

リレーション空間は、因果律の連結強度で定義される空間である。そういう次元があるわけではなく、認識の枠組み、見え方の一つである。「因果関係の有無」を読み出す認識方法と言い換えられる。司波達也の場合は、認識の焦点を当てた存在の背後に因果関係を持つ存在や事象が透けて見える。原理的にはこのやり方で未来予知も可能だが、2096年時点においては、まだ「現在」と最長24時間の「過去」しか読み取ることはできない[Ⓝ劣-10-283・284]

「意味」

ある事象に込められた「意味」は、イデアにも伝わる[Ⓝ劣-16-150]

例えば『サイレントヴェール』は、物理的なを減衰させる魔法である。この魔法は、「想子の音」で伝わる魔法『マンドレイク』の効力を弱めることができる。これは、「音を遮断する」という「意味」が想子の領域に伝わり、伝播する想子波を減衰させるためである[Ⓝ劣-16-150]

また、司波達也が使用した「完全に均質な高密度の想子層」を展開する『接触型術式解体』では、想子層は物質体次元だけでなくイデアでも展開された。これは「想子に包まれている」という情報が、イデアで再現されるためである(想子は情報を媒介する粒子なので当然のことである)[Ⓝ劣-32-207]
これは先の「イデアに『意味』が伝わる」という内容に非常によく似ているように感じられ、ここには何らかの関連があるかもしれない[管推]

魔法・魔法師・SB

魔法

魔法の一時的形態は、イデアに魔法式を出力し、エイドスを書き換える技術である[Ⓝ劣-1-11]

四系統八種現代魔法は、イデアを経由してエイドスに魔法式を投射するものである[Ⓝ劣-4-249,15-113]。魔法式はイデアに露出し、「世界」を騙す[Ⓝ劣-,28-151]

現代魔法の魔法式は、定義された座標に突如出現する(魔法式の投射)[Ⓝ劣-15-113]
魔法的な座標とは、対象とするエイドスのイデア内における相対座標のことである[Ⓝ劣-3-354]。「情報次元の座標」とも表現される[Ⓝ劣-22-159・170]
また、魔法式の投射とはイデアの中における情報の移動であり、魔法式という信号魔法師と対象物の間を物理的に移動するわけではない[Ⓝ劣-4-439]
イデアにおいては、軌跡や航跡の類は生じない。何処に何があるか定義されれば、それは、そこにある[Ⓝ劣-10-143]

魔法師

  • 現代魔法師は皆、イデアにアクセスする能力を持っていて、イデアの中に個々のエイドス認識している(エイドス認識力)。しかしそれを意識して・・・・見分けることができる者は少ない[Ⓝ劣-2-191,4-249]
  • 魔法師は、事象の記録であるエイドスを読み取ることで、本体である事象そのものを認識する。これは、『精霊の眼』を持たなくても、魔法を行使する際は程度の差はあれ、全ての魔法師が行っていることである[Ⓝ劣-30-96]
  • 肉眼で見えない相手に魔法を掛けるためには、イデアで標的の「姿」(=エイドス)を捉えなければならない[Ⓝ劣-30-190]
  • イデアを通じた認識は、映像ではなく概念として流れ込んでくる[Ⓝ劣-3-292]
  • 物質体次元で遥か遠方にある事象を観測するとき、物理観測だと本当の意味でリアルタイムの情報は得られない。たとえば1光年先の事象を光学観測したとき、そこで得られる情報は1年前に起こった事象の情報である。しかしイデアを通じた情報認識では、本当にリアルタイムの情報を得ることができる[Ⓝ㊕星呼-26,管補]

SB

精霊

  • 精霊は、個別の事象から離れて抽象的な「概念」の塊となったもの。実体を離れイデアを漂う情報体「存在」から離れてイデアを漂っている「独立した非物質存在となった情報体(独立情報体)」である[Ⓝ劣-3-292・293]
  • 精霊は、自然現象に伴ってイデアに記述された情報体が実体から遊離して生まれた孤立情報体とされる[Ⓝ劣-9-192]
  • 精霊は、自然現象の発生に伴ってイデアに記述された想子情報体が当該現象終了後もイデアに残存し続け、事象から遊離した想子孤立情報体となったもの[Ⓝ劣-14-94]
  • 概念そのものがイデアを移動すると、これに付随して、その概念によって表現されるエネルギーが塊となって実体世界を移動する[Ⓝ劣-3-293・294]

パラサイト

「この世界」にやってきたパラサイトは、イデアを漂っている[Ⓝ劣-10-143]

精神は、情報体次元に直接のアクセスはできない。アクセスするためには想子構造体を構築する必要があり、その中に設けた通路(精神が情報次元にアクセスするためのチャネル)を使う必要がある(霊子情報体支持構造[Ⓝ劣-28-72,29-166,30-95]

個別の魔法

術式解散〈グラム・ディスパージョン〉

想子情報体『術式解散』で破壊されると、想子情報体を構成していた想子はイデアの中に消える[Ⓝ劣-13-328,14-96]

精霊の眼〈エレメンタル・サイト〉

『精霊の眼』は、イデアの「景色形色)」を視る能力。イデアにアクセスして「存在」認識する知覚力現代魔法師が持つエイドス認識力を拡張したもの[Ⓝ劣-4-248・249]

徹甲想子弾

本来、イデアに「移動」や「排他」の概念は存在しない[Ⓝ劣-10-177,25-195]

「移動する」という情報は存在しても、情報それ自体の位置変化は不連続で、時間を要しない[Ⓝ劣-25-195]

だが司波達也『徹甲想子弾』の開発に当たってこれらの概念を持ち込んだ[Ⓝ劣-10-177,25-195]
『徹甲想子弾』は、「イデアを連続的かつ排他的に移動していく」という定義を与えられた想子の塊である[Ⓝ劣-25-195]

達也は認識方法を変え、(イデアに浮かぶ)的に対して、想子弾を直接当てる・・・のではなく、的の手前から1/32秒刻みで座標を設定し、それを無意識領域において連結することで理の世界を移動・・する排他・・の概念弾を作り出した[Ⓝ劣-10-178]

迦楼羅炎

『迦楼羅炎』は、現象に伴う情報のみを発生させることで、物質次元に干渉せずイデアだけに干渉する魔法。現実の世界で生じていない「燃焼」が、イデアで「そこにあるものが燃える」という情報の書き換えを引き起こす魔法。「魔法のシステムはこういうもの」という概念を逆転させたような魔法[Ⓝ劣-10-116]

再成

『再成』により生じる因果の逆転は、イデアにおいて正常な因果の流れとぶつかり合い、想子波のノイズを発生させることがある[Ⓝ劣-23-60]

仮装行列〈パレード〉

『仮装行列』による外見の変化は、物質的な外形だけでなくイデアにまで及ぶ[Ⓝ㊕星呼-131]

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