乗積魔法〈マルチプリケイティブ・キャスト〉

乗積魔法〈マルチプリケイティブ・キャスト〉は、二人の魔法師が、互いの魔法力を足し合わせるのではなく、掛け合わせて魔法を発動する技術^{[Ⓝ劣-12-351]}。

魔法式の構築と事象干渉力の付与を分担して一つの魔法を発動する魔法技術^{[Ⓝ劣-22-260]}。

「七草の双子」の乗積魔法

原理

七草香澄と七草泉美の場合は、（儀式魔法の場合と違って）通常の魔法を発動するのと同じように、CADによるサポートを受けるだけで魔法力を増幅させている。しかもこの二人は、魔法式のパーツを分担しているのではなく、魔法力そのものを一つに組み合わせることができる^{[Ⓝ劣-12-351,管補]}。

肉体的に同一の遺伝子を有しているのみならず、魔法演算領域の特性までもが完全に一致しているため、魔法力そのものを組み合わせることができる^{[Ⓝ劣-12-351,管補]}。

この二人が「七草の双子」という二つ名で呼ばれ、「七草の双子は二人揃ってこそ真価を発揮する」と言われるのは、このように力を合わせることにより・・・・・・・・・・・、一人一人では不可能な高威力・高難度の魔法を行使することができるからである^{[Ⓝ劣-12-350･351]}。

香澄と泉美は、香澄が魔法式を放ち泉美がそれに干渉力を与えることも、それぞれが逆の役割をこなすこともできる^{[Ⓝ劣-12-351]}。
香澄が魔法式の構築を、泉美が事象干渉力の付与を担うことが多いが、どちらが主でどちらが従という決まりはなく、逆の役割でも乗積魔法は全く同じように作動する^{[Ⓝ劣-22-260,26-150]}。

この魔法技術を使うとき、香澄と泉美は手をつなぐ。手と手を通して、互いの想子が二人の身体を循環する^{[Ⓝ劣-26-149]}。

「七草の双子」による乗積魔法の具体例

恒星炉公開実験

2096年4月に一高で行われた恒星炉公開実験では、七草香澄と七草泉美が『第四態相転移魔法』　フォース・フェイズ・シフト　の役割を担当したが、これは乗積魔法により発動された^{[Ⓝ劣-12-265･266･269･308]}。

七宝琢磨との模擬戦

2096年4月に行われた七宝琢磨との模擬戦では、香澄が魔法式を構築・投射し、泉美がそれに事象干渉力を与える形で、乗積魔法による『窒息乱流』　ナイトロゲン・ストーム　を発動した^{[Ⓝ劣-12-347∼351]}。

しかし琢磨が『ミリオン・エッジ』を繰り出してきたため、乗積魔法による『熱乱流』　ヒート・ストーム　のアレンジ魔法をマルチ・キャストで追加した^{[Ⓝ劣-12-352･353･361]}。

国防陸軍情報部との戦闘

2097年の三矢詩奈失踪事件において情報部と戦闘になった際、香澄と泉美は乗積魔法で『窒息乱流』　ナイトロゲン・ストーム　、『ドライ・ブリザード』、および『酸素空洞』　オキシゲン・チェンバー　を立て続けに繰り出した^{[Ⓝ劣-22-259･260]}。

九島光宣との戦闘

2097年の九島光宣との戦闘においては、まず灯りの魔法で光源を確保したのち、『冷気嵐流』　コールド・ストーム　で攻撃、さらに『窒息乱流』　ナイトロゲン・ストーム　を浴びせたが、パラサイトと化した光宣には通用しなかった^{[Ⓝ劣-26-150∼154]}。

とは言え、香澄と泉美の乗積魔法による攻撃が、光宣を追い詰めていたことも確かである^{[Ⓝ劣-26-178]}。

儀式魔法による魔法力増幅技術との違い

通常、複数の魔法師が同時に同じ魔法を発動するだけでは、魔法力が加算されたり増幅されたりすることはない。最も魔法力の強い魔法師の術式が効果を顕すだけで、他の魔法師の魔法力はむしろ事象改変の邪魔になる。多人数で行う儀式魔法は、儀式に加わる魔法師が魔法式の各層を重複しないように分担することで複雑な、あるいは巨大な魔法式を走らせる。スペルやシンボルは各魔法師の魔法力を振り分ける目印、あるいは回路の役目を果たす^{[Ⓝ劣-12-351]}。

複数の魔法師が一つの儀式を行うことで、単独では不可能な大規模魔法、高等魔法を実行する技術は存在する。特に古式魔法では、伝承されている術法としては珍しいものではない。だが、この種の魔法儀式は必ず詠唱、祭壇、舞踊などの五感で共有できる媒体またはプロセスが必要となる^{[Ⓝ劣-12-350]}。

こうしたことを踏まえると、乗積魔法という魔法技術は、魔法師にとっては異常な現象である^{[Ⓝ劣-12-350,管補]}。

備考

• 乗積魔法は、複数の魔法師が一つの魔法を協働で発動する「魔法の協働発動技術」に分類されるかもしれない^{[Ⓝ劣-23-147,管推]}。
• 魔法は個人で使うものであり、複数の魔法師が一つの魔法を協働で発動することは原則的に無い。稀にそのような能力を備えた魔法師が生まれてくることはあるが、協働できるのはせいぜい二人か三人である^{[Ⓝ劣-23-147]}。
• 乗積魔法に類似の魔法技術としては、精神の強制リンクなどが考えられる。これは、USNAの空母 「エンタープライズ」の動力となっている魔法師や、新ソ連の「アンドレエヴナ」、国防海軍の「わたつみ」シリーズなどで採用されている^{[Ⓝ劣-23-147∼149,管推]}。
• 乗積魔法が発動されると、強烈な想子波動が発生する^{[Ⓝ劣-26-160]}。
• ほのかとピクシーの共鳴や、茉莉花とアリサの間に起こっている現象について、どこか似た気配が感じられるが、管理人の勘違いかもしれない。
• 司波達也が編み出した事象干渉力を後から追加する技術に、この魔法技術が関連している気がするが、管理人の勘違いかもしれない。