雲散霧消〈ミスト・ディスパージョン〉は、物質を分子レベルに『分解』する魔法[Ⓝ劣-3-333]。
司波達也が得意とする魔法[Ⓝ劣–]。殺傷性ランクはA相当[Ⓝ劣-3-333]。
構造情報に対する直接干渉であり、最高難度の魔法に属する[Ⓝ劣-4-8]。
現象
対物体
この魔法を物体に対して使用すると、気体に変化することによって体積が急激に増大する(膨張)[Ⓝ㊕星呼-166]。それゆえ、密閉空間内の物体を対象とした場合には、その容器が破壊されることがある[Ⓝ劣-24-291]。密閉されていなくても、狭い空間内の物体を対象とした場合には、急激な圧力上昇によって爆風が発生し、近辺の備品が破損することがある[Ⓝ劣-31-259]。
また、瞬間的に固体が気体に変化するために、空中に密度の異なる気体層が形成され、これによって光の屈折現象が起こり、景色が歪んで見える[Ⓝ劣-8-233]。
可燃性物質を分解すると、(酸化による)燃焼が起こることがある[Ⓝ劣-29-208]。『分解』のレベルを引き上げ、可燃性ガスが生じないようにすることもできる[出典?]。
巨大な物体を対象とした場合は、大量の粉塵が巻き起こり、勢いよく押し寄せてくる[Ⓝ劣-31-259,Ⓝ㊕星呼-166]。
対人体
人体を対象とした場合、可燃性ガスが発生し、空気中の酸素と化合して小さい炎が発生する[Ⓝ劣-4-422・423]。
血は流れず、肉が飛び散ることもなく、ただぼやけ、歪み、消え失せていく[Ⓝ劣-8-229・230]。
この人体消失現象を間近で目撃したブラジル軍人は、「小規模な爆風を残して、一瞬で消えてしまった」「身体のシルエットが揺らいだかと思ったら、風が広がって消えてしまった」「風に変わったかのようだった」と述べている[Ⓝ劣-31-235]。
原理
物質の構造情報に干渉し、物質を元素レベルの分子またはイオンに分解する[Ⓝ劣-4-8]。
物質が分子やイオンなどに分解された状態に構造情報を書き換えることで、「物質が分子やイオンに変わった」という現象を引き起こす[Ⓝ劣–]。
しかし、細胞のひとつひとつや、物質を構成する分子や分子間結合などを顕微鏡的に見て理解しているわけではなく、物質の情報を記録しているサイオン情報体(エイドス)の構造を理解し、(必要な箇所を)分解している[Ⓝ劣-28-69]。
発動手順
- 対象とする物体の素材情報を取得する[Ⓝ劣-30-287]。
- 取得した素材情報を変数として魔法演算領域に入力する[Ⓝ劣–]。
- 物質の構造情報を分解する魔法式を、魔法演算領域で構築する[Ⓝ劣-31-254・255]。
- 構築した魔法式を、対象とするエイドスの座標に投射する[Ⓝ劣–]。
- エイドスの構造情報が改変される[Ⓝ劣–]。
- イデアにおいて改変された情報が物質の次元に反映され、対象の物体が指定のレベルに分解される[Ⓝ劣–]。
魔法の無効化
『雲散霧消』、あるいはその深化版である『大深度雲散霧消』は、魔法の無効化にしばしば使われる。
2096年の南盾島事変では、『ヘビィ・メタル・バースト』の無効化に用いられた。このときは、重金属 原子から電子をはぎ取ってこれらの粒子を飛散させる『ヘビィ・メタル・バースト』に対し、重金属原子核を陽子と中性子に分解する『大深度雲散霧消』をぶつけた。これにより「重金属原子」という『ヘビィ・メタル・バースト』の対象が失われ、魔法の定義破綻を引き起こした(定義破綻による魔法の無効化)[Ⓝ㊕星呼-192・193]。
2097年の宗谷海峡事変では、『トゥマーン・ボンバ』の無効化に用いられた。このときは、水素 分子と酸素分子を直接結合させる『トゥマーン・ボンバ』に対し、水を水素と酸素に分解する『雲散霧消』をぶつけ、両者が拮抗した状態を作り出し(相克による魔法の無効化)、最終的に魔法の定義破綻を引き起こした(定義破綻による魔法の無効化)。また、同魔法による伊豆半島への攻撃の際にも使用した[Ⓝ劣-21-250,24-275∼277]。
同年の九重八雲との戦いでは、八雲が放った多数の針に対して『雲散霧消』を行使した。針の群れには放出系統の術式が込められていたが、『雲散霧消』によって「針」という実体を失ったことで、「放出系統魔法を放つ針」という定義が破綻し、魔法は無効化された(定義破綻による魔法の無効化)[Ⓝ劣-29-246・247]。
なお、実体を失うことによる定義破綻については、アークトゥルスとカノープスの戦いにおいても確認することができる[Ⓝ劣-26-43]。
軍事機密指定
『雲散霧消』は軍事機密指定がなされている魔法であり、達也も無闇に使うことはできない[Ⓝ劣-3-333,4-250,6-308,18-222,30-38,19-186,SS-182]。
しかし、横浜事変の際にはやむを得ず多くの友人・知人の目の前で使用した。七草真由美には『マルチスコープ』で現場を目撃されさえした[Ⓝ劣-7-126・127]。
十文字克人には目撃されてこそいないものの、『雲散霧消』発動に伴う空間の質量分布の大規模な改変を感知されている[Ⓝ劣-7-128・129]。克人はこれについて「大規模でスムーズであるにも関わらず、事象改変の反作用がほとんどない魔法」[Ⓝ劣-7-128・129]、「精緻な魔法」「驚くほど影が薄い魔法」[Ⓝ㊕星呼-198]などと評している。
2097年の九島光宣の追走劇においては多くの一般人の前で使用し、佐伯広海の不興を買った[Ⓝ劣-30-38]。
また、同年の巳焼島事変においては、モニター越しではあるが、千葉エリカ・西城レオンハルト・吉田幹比古にわざと「人を消す」場面を見せている[Ⓝ劣-31-215・216]。