梓弓(あずさゆみ)は、中条あずさだけが使える情動干渉系の固有魔法。一定のエリア内にいる人間の情動に干渉し、ある種のトランス状態に誘導する効果を持つ。指向性のない魔法であるため、照準補助は必要ない。系統外・精神干渉系のカテゴリに分類される[Ⓝ劣-1-230∼232,7-101・102,20-258・261,㊮入学案内-24,全テ-17・89,GB-劣1-2-7,10-19・26]。
意識を奪うわけではなく、また意思を乗っ取るわけでもないので、相手を無抵抗状態に陥れることまではできない。しかし個人ではなくエリアを対象として働きかけるので(=領域魔法)、精神干渉系には珍しく同時に多人数を相手として仕掛けることができ、興奮状態にある集団を沈静化させるにはもってこいの魔法である[Ⓝ劣-1-232,7-101,GB-劣1-2-19,管補]。効果だけを見るとそれほど強力な魔法とは思えないが、トランス状態にある人間は被暗示性が高まるため、使いようによっては恐ろしい洗脳の道具になる。そもそも精神に干渉する魔法の使用は特に厳しく規制されており、未成年の判断で軽々しく使用できるものではない。(そうした理由から)この魔法には法令で第一級制限が課せられているが、あずさがこの魔法を使うことについては第一高校内に限ることを条件として特例で許可を受けている(研究機関における使用制限緩和の抜け道をついた裏技)[Ⓝ劣-1-232∼234,7-101,㊮全テ-17・89,GB-劣1-2-7,10-19,管補]。
あずさは制服の胸元に隠しているロケットタイプのCAD(ペンダント形態単一目的特化型CAD)を用いてこの魔法を発動している[Ⓝ劣-7-102,㊮入学案内-24,全テ-17,GB-劣1-2-26]。
使用時に起こる現象
横浜事変の場合
澄んだ弦の音が(論文コンペの会場の)最前列から最後列まで徹り抜けた。これは幻聴であり、空気ではなく無意識の海を伝わった、想子ではなく霊子を震わせた波動である。澄み切った響きは次の響きを人々に渇望させ、意識をただそれだけに縫い止めることで人々の心を静かな状態へと導いた[Ⓝ劣-7-102・103,㊮全テ-89]。
最初の響きが完全に消えてしまったタイミングで次の響きが人々の無意識を振るわせ、人々は更に強く次の響きを待った。こうして何時しか人々は考えることを止めてただ己の内側に耳を傾けるようになり、パニックは忘我に変わった(ここまでの経過時間はわずか3秒であった)[Ⓝ劣-7-103]。
考えることを止めていた観客たちの意識は、このタイミングで話し始めた七草真由美の声に余すところ無く吸い寄せられ、全聴衆の意識は掌握された[Ⓝ劣-7-103]。
西果新島テロ未遂事件の場合
ハープのような、弦を弾く音がどこからともなく響いてきて、その音色に誘われてジャスミン・ウィリアムズの意識は現実から遊離した。その音が何処から聞こえてきたのかは分からなかった。それが本当に耳で聞いた音なのか、それとも幻聴なのか、それも分からなかった。そんな場合ではないのに、ジャスミンはその音が何処から聞こえてくるのか、それだけに意識を奪われてしまった。そして、次に何時その音が聞こえてくるのか、それだけに意識を向けられてしまった[Ⓝ劣-20-258]。
その直後、ジャスミンの手にあるナイフを取り上げるために中条あずさが魔法を行使した。ここでジャスミンは我を取り戻したものの完全ではなく、指に力が入らずナイフは手を離れ床に落ちた[Ⓝ劣-20-259]。
使用履歴
1回目
- 日時:2095年10月30日(日)[Ⓝ劣-7-]
- 場所:横浜国際会議場[Ⓝ劣-7-]
- 状況:横浜事変の勃発直後[Ⓝ劣-7-]
- 対象:論文コンペの会場内全体[Ⓝ劣-7-102]
- 戦果:パニックに陥りかねない生徒らを鎮め、迅速な対応を取らせることに寄与した[Ⓝ劣-7-100∼106]。
- 備考:七草真由美が「責任を取る」と明言し、これを受けて中条あずさは魔法を行使した。なお真由美のこの「明言」は、この場を傍観している権威があるはずの大人たちを(制限の強い魔法の使用を邪魔させないよう)牽制する為のものでもあった[Ⓝ劣-7-101・102,㊮全テ-89,管補,管推]。
2回目
- 日時:2097年3月28日(木)[Ⓝ劣-20-]
- 場所:西果新島[Ⓝ劣-20-]
- 状況:西果新島におけるテロの実行中[Ⓝ劣-20-]
- 対象:ジャスミン・ウィリアムズとジェームズ・J・ジョンソンがいるエリア。すぐそばにいた壬生紗耶香が動けていることから、かなり狭い範囲に絞ったものと思われる[Ⓝ劣-20-258・259,管推]。
- 戦果:ジャスミンのナイフを床に落とし、人質に取られていた千代田花音を奪い返すことに成功[Ⓝ劣-20-259]
- 備考:(ジャスミンと同じく)ジョンソンも自失状態に陥った[Ⓝ劣-20-259,管補]。
備考
- 七草真由美は「(新入部員勧誘活動のような状況においては)あーちゃんの魔法は頼りになる」「パニックなどを防ぎたい時の為の魔法」と評している[Ⓝ劣-1-229,7-101,管補]。
- 渡辺摩利は「大勢が騒ぎ出して収拾がつかない、というようなシチュエーションにおける有効性ならば『梓弓』の右に出る魔法は無いだろう」と評している[Ⓝ劣-1-229]。
- 非公開の魔法であり、データベースには登録されていない[Ⓝ劣-1-229・230]。
- 「この魔法の存在を知れば、利用しようとする独裁政治家、テロリスト、カルト指導者は後を絶たないだろう」という記述がある[Ⓝ劣-1-232,㊮GB-劣1-2-19]。
- あずさは2095年時点では、「自分が持つこのレアスキルだけは真由美にも摩利にも負けない」と密かに思っているが、それも(トーラス・シルバーである)司波達也には意味をなさないのではないかと感じている[Ⓝ劣-4-364,管補]。


