海爆〈オーシャン・ブラスト〉は、一条将輝が操る戦略級魔法[Ⓝ劣-26-242]。
『トゥマーン・ボンバ』の基幹技術である『チェイン・キャスト』を用いた、海上用超広域『爆裂』の魔法[Ⓝ劣-27-2・113・114]。 新ソ連海軍による日本侵攻に備えて開発されたもので、司波達也が基本設計を行い、これを基にした起動式の作成を吉祥寺真紅郎が行った[Ⓝ劣-26-242,27-2・96・98・123,28-165]。原理
『爆裂』の魔法式を、『チェイン・キャスト』によって海上の広範囲に展開し、水深3mまでの海水を一斉に気化させ、大規模な水蒸気爆発を引き起こす[Ⓝ劣-27-2・231]。この水蒸気爆発は単に水を水蒸気に変えるだけのものではなく、生み出された瞬間に水分子をさらに加速することで威力が高められている[Ⓝ劣-27-233]。
海面およびその直上においては、『トゥマーン・ボンバ』と比べても遜色のない威力を有している[Ⓝ劣-27-2]。
ただし、要求される魔法演算能力が高すぎるため、高性能コンピュータを組み込んだCADで魔法師の変数処理を全て肩代わりする必要がある[Ⓝ劣-27-113・114]。
実際に使用される『海爆』用CADは、大型スーツケースサイズとなった[Ⓝ劣-27-183]。
開発
開発の背景
日本時間2097年6月28日未明、大亜連合軍が新ソ連・沿海地方に侵攻をしかけ、大ソ戦争が勃発した[Ⓝ劣-26-224]。
大亜連合が侵攻したのは、イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフが重傷を負ったことをチャンスと捉えたためと見られるが、司波達也の見立てではベゾブラゾフのダメージは一時的なものであり、快復し次第、戦場に出て来る可能性が高い[Ⓝ劣-26-225・226・231・237,27-92]。そうなれば大亜連合が敗北する可能性が高く、大亜連合は対外的な軍事行動を取りにくくなる。これは新ソ連が自由に動けるようになることを意味し、日本海側で軍事的な動きを起こしやすくなることを意味する[Ⓝ劣-26-237・238,27-96]。
達也としては、軍人としても、また東道青波との約束を遵守するためにも、国防活動に参加すべきである[Ⓝ劣-26-238]。
しかし達也自身は、九島光宣やパラサイトの対処に忙しく、手が回らない可能性がある[Ⓝ劣-26-228∼230,27-96]。
また、新ソ連が日本に対して『質量爆散』を使えないよう政治的な手を打ってきた場合にも、達也は対応できなくなってしまう[Ⓝ劣-27-122・123]。
そこで、自分以外の対応可能な戦力を作り出すため、一条将輝に使わせる戦略級魔法の開発を開始した[Ⓝ劣-26-228・229・238・242∼244,27-96・124]。
開発の流れ
起動式の基本設計は、6日後の7月4日に完成した[Ⓝ劣-27-98]。達也はその続きを吉祥寺真紅郎に任せた。吉祥寺は設計を基にした起動式の開発を開始し、これは7月7日未明に完成した[Ⓝ劣-27-98・114・182・183]。
同日、金沢基地にて将輝が発動前実験を実施、無事成功した[Ⓝ劣-27-183・197∼202]。
実戦使用
7月8日、新ソ連海軍の極東艦隊が日本海を南下し、佐渡島沖にて国防海軍と交戦。将輝は佐渡島から『海爆』を放ち、敵艦隊を殲滅した(第2次佐渡沖戦闘)[Ⓝ劣-27-207・218・231∼233]。
これは日本国民を大いに勇気づけ、翌9日には将輝は正式に日本の二人目の「使徒」と認定された[Ⓝ劣-28-162・163]。
◇◇◇
将輝はその後、研鑽を重ね、この魔法を「進化した」と表現できるレベルにまで引き上げている[Ⓝ劣-32-263]。
使用履歴
1回目
- 日時:2097年7月8日 14時07分[Ⓝ劣-27-233]
- 場所:佐渡島西方沖合[Ⓝ劣-27-218]
- 対象:新ソ連海軍極東艦隊の別動隊[Ⓝ劣-27-233]
- 戦果:小型高速艦12隻が全滅[Ⓝ劣-27-233]
その他
- 司波達也が一条将輝に使わせることにしたのは、日本海側での軍事衝突を懸念したためだが、「将輝が『使徒』となってくれれば、自分にとって鬱陶しい柵も多少は減るだろう」という目算もあった[Ⓝ劣-26-244]。
しかしこの悪だくみは、将輝の「使徒」認定の記者会見の場で、吉祥寺真紅郎が「基礎部分は達也が開発した」ことを明かしてしまったことにより、失敗に終わった[Ⓝ劣-28-165・166,30-31・32]。 - 要求される魔法演算能力が高すぎるため、吉祥寺は「一条剛毅にも使いこなせないだろう」と感じている[Ⓝ劣-27-114]。
- 起動式の読み込みから魔法式の完成までには、1秒の時間を要する[Ⓝ劣-27-202・231]。
- 将輝が初めて『海爆』を実戦使用した際、制御しきれなかった余剰想子を撒き散らした[Ⓝ劣-27-235]。
この想子波動によって、九島光宣はジェイコブ・レグルスに使わせている光学迷彩魔法を解除してしまい、偶然にもパラサイトによる巳焼島襲撃事件への対応の一助となった[Ⓝ劣-27-236・237]。
その一方で、『海爆』の想子波動は封印状態にあったアレクサンダー・アークトゥルスを覚醒させ、達也による桜井水波奪還を妨害することにもつながった[Ⓝ劣-28-32・56]。 - 『海爆』の開発者が達也であるという情報はUSNA軍に緊張をもたらし、軍上層部は「達也を抹殺すべきだ」という陣営と「生かして利用すべきだ」という陣営に分裂[Ⓝ劣-28-179∼181]。イリーガルMAPによる光井ほのか誘拐事件および柴田美月誘拐未遂事件、そして8月の巳焼島事変へとつながっていった。
- 司波深雪の『氷河期』は、『海爆』と同じく『チェイン・キャスト』を使った、戦略級魔法に匹敵する超広域冷却魔法である[Ⓝ劣-31-2・101]。
- イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフにとって『チェイン・キャスト』は『トゥマーン・ボンバ』の一部であるため、ベゾブラゾフは『海爆』を「『トゥマーン・ボンバ』を盗用した魔法」と見なしている[Ⓝ劣-31-243]。