数字落ち〈エクストラ・ナンバーズ〉は、「数字」を剥奪された魔法師の一族[Ⓝ劣-3-8,5-332]。
所期の性能を満たせなかったために追放された魔法師[Ⓝメ-1-125]。
かつて、魔法師が兵器であり実験体サンプルであった頃、魔法技能師開発研究所において「成功例」としてナンバーを与えられた魔法師が、「成功例」に相応しい成果を上げられなかったために捺された烙印[Ⓝ劣-3-8,5-332,14-238]。
「数字落ち」は少数であるが故に、徒党を組んで実力行使で権利を回復するという対抗手段を持てない。ただ自分が数字落ちであるとバレないように、世間の片隅で息を潜めているしか選択肢が無かった[Ⓝメ-1-126]。
「数字」剥奪の基準
「数字」が剥奪されるのは、反逆の罪を犯した場合や、重大な任務に失敗した場合、あるいは「無能」と判断された場合などである[Ⓝ劣-5-332]。
日本魔法界の禁忌〈タブー〉
「数字落ち」は、日本の魔法師にとってある種のタブーになっている。彼らは魔法技能師開発研究所の非人道性の生きた証拠であり、日本魔法界に君臨する十師族にとっては同族を見捨てた罪の証である。どうしようも無く罪悪感を催す存在であるが故に、差別と忌避の対象とされ、その歴史がまた罪悪感を増幅するという悪循環をもたらしている[Ⓝメ-1-125,2-189･229]。
俗な表現をすると、「思い出したくない黒歴史」扱いの存在である[Ⓝメ-2-282]。
かつては、「数字落ち」に対する忌避感は強く、いないものとして扱われていた。そのせいで（そのお陰で）、魔法師に課せられる制限は存在しないことになっていた彼らには適用されず、新ソ連のような非友好国に行くこともできた[Ⓝキ-3-52･53,管補]。
2070年代ごろ以降は、「数字落ち」に対する忌避も蔑視も（表向き）見られないようになっていて、差別意識は薄れている。しかし、完全には解消されていない[Ⓝ劣-7-27,Ⓝメ-1-125･126,Ⓝキ-1-40]。
今では「数字落ち」に対する差別は恥ずべきこととされていて、「数字落ち」を迫害することも、「数字落ち」という名称を公式に使用することも禁止されている。「数字落ち」であることを理由に差別的取り扱いをすることは、魔法師のコミュニティにおいて重大な非違行為とされている。「数字落ち」であることを思い出させさえしなければ、ライセンスを取って魔法師として身を立てることもできる[Ⓝ劣-3-8,5-332,Ⓝメ-2-307･308]。
その一方で、「数字落ち」の得意魔法は今なお魔法界に受け容れられていない。魔法師社会で活躍できるのは元々の「数字」を隠している場合に限られ、「数字を剥奪された理由となった魔法」以外の魔法だけ、すなわち得意魔法以外の魔法だけしか認めてもらえない。得意魔法以外を磨けば他と同じ待遇が得られるが、一番得意なものを認められないのは、明らかなハンデである[Ⓝメ-2-308,Ⓝキ-1-40]。
罪悪感は普段は意識の奥深くに埋没しているだけで消えてはおらず、ふとした弾みに頭をもたげる。「数字落ち」に対する差別は、2095年時点においても隠然と魔法師の社会に居座り続けている。司波達也らの世代であれば、自分の家系が「数字落ち」であることを知らない者の方がたぶん多いが、これは偏見が根強い中で青少年期を過ごしてきた親世代がそのことを隠しているためである。彼らを「失敗作」「欠陥品」と見なす偏見は、それ程に根深く魔法師の無意識に刷り込まれている[Ⓝ劣-5-332･333,7-27,Ⓝメ-1-125･126]。
「数字落ち」の各家
一花家（市原家）
市原家は、「一花」の数字落ちである[Ⓝ劣-7-27･237,Ⓐ劣2-11-B]。人体を操る（人体の動きを操作する）種類の人体直接干渉魔法（『随意筋を司る運動中枢を麻痺させる魔法』など）は使用を禁じられているが、それを破ったことが原因となり、「数字」を剥奪された[Ⓝ劣-7-237,17-283,19-257,Ⓝキ-3-112,管補]。 市原鈴音の父親は魔法師のコミュニティで厳しい孤立を味わい、市原家が「一花」だったことを鈴音に隠している[Ⓝ劣-7-27]。
仁科家[Ⓐ劣2-11-B]
二宮家[Ⓐ劣2-11-B]
三咲家（岬家）[Ⓐ劣2-11-B,GB来-5-5･26]
岬家は、「三咲」の数字落ちである[Ⓝ劣–]。三宅家[Ⓐ劣2-11-B]
五来家[Ⓐ劣2-11-B]
七倉家（名倉家）
名倉家は、「七倉」の数字落ちである[Ⓝ劣-5-333,Ⓐ劣2-11-B]。「数字」剥奪の原因は名倉三郎。第七研のテーマである群体制御魔法では、CAD以外に余計な発動媒体（『ミリオン・エッジ』に用いられる本のように「弾」となるもの）をわざわざ必要とする[Ⓝ劣-14-239･240,管補]。
名倉はこれを「実戦的でない」と考え、術式に手を加えてどんな時にも使えるようにアレンジした。具体的には液体に形を与えて弾にする技術を編み出した。その代わりに、同時に制御できる対象物の数は100に満たなくなった。その結果「期待された性能を発揮できていない」と判断され、ナンバーを剥奪された[Ⓝ劣-14-239･240]。
八島家[Ⓐ劣2-11-B]
九能家[Ⓐ劣2-11-B]
十神家（遠上家）
遠上家は、「十神」の数字落ちである[Ⓝメ-1-125･153,Ⓝキ-1-40,Ⓐ劣2-11-B]。2060年頃に第十研を追放された[Ⓝキ-1-69]。 遠上遼介は「追放されたのは父（遠上良太郎）」[Ⓝメ-1-153]と述べているが、「（遠上茉莉花の）祖父が研究所を追放された」[Ⓝキ-2-24]との記述もあり、どちらが正しいのかはわからない。
良太郎だけでなく、遼介の祖父も直接に被害を受けている[Ⓝメ-2-189]。
追放の原因となったのは、十神の魔法である『リアクティブ・アーマー』。第十研は重要拠点と重要人物を守る魔法師の開発を目指していたが、この魔法では自分自身しか守ることができないため、「十神」を「遠上」に堕とした[Ⓝメ-2-276]。
ただし十神家は、不良品として見捨てられた他の数字落ちとは少し性質が違う。「最強の盾」の役割を果たせなかった「十神」は、代わりに単身敵陣へ突入する特攻兵としての使い方を想定した調整が進められた。結局、戦局を左右するほどの決定力が期待できなかったために放逐されたが、『リアクティブ・アーマー』には十文字家や十山家に勝るとも劣らないレベルで改造が加えられている[Ⓝメ-2-276･277]。
「数字落ち」のキャラクター
市原鈴音
市原鈴音は、自分の家が元「一花」であることを親から知らされていないが、察してはいる[Ⓝ劣-7-27]。 七草真由美は、鈴音が余り自己主張をせず、万事において一歩引いているようなスタンスだったことについて、生来の性格もあっただろうが、それ以上に「数字落ち」だった親の影響が強いのではないかと考えている[Ⓝメ-1-126]。深見快宥
深見快宥は、第二研の「数字落ち」の家系[Ⓝメ-2-189]。祖父が「数字」を剝奪された[Ⓝメ-2-228]。元の家は仁科家または二宮家だと思われるが、どちらなのかは不明。
深見は、「数字落ち」の理不尽な境遇に対する抗議行動の一環として、進人類戦線で犯罪を行っている[Ⓝメ-2-307･309]。
岬寛
岬寛は、元「三咲家」の魔法師[GB来-5-5･25]。 進人類戦線の元リーダーで、アニメにおいて2096年4月にオフショアタワーテロ事件を起こした[Ⓐ劣2-11∼13]。名倉三郎
名倉三郎は、余計な発動媒体を必要とする第七研の群体制御魔法について「実戦的でない」と考え、同時に制御できる数は減るもののより実戦的な魔法を重視した結果、「数字」を剝奪された[Ⓝ劣-14-]。遠上良太郎
遠上良太郎は、息子の遼介に『リアクティブ・アーマー』が発動しないよう意識してコントロールする方法を叩き込んだ。しかし良太郎はこれを反省し、娘の茉莉花には『リアクティブ・アーマー』を教え込んでいる[Ⓝメ-2-282]。遠上遼介
遠上遼介は、「数字落ち」の境遇について「理不尽だ」と思っているが、抗議行動は起こしていない。それは諦めや絶望によるものだが、犯罪という手段を取らないのはレナ・フェールがそれを望まないからでもある[Ⓝメ-2-307∼310]。遠上茉莉花
遠上茉莉花自身は、「数字落ち」だからと嫌な思いをしていないが、祖父・父・兄が嫌な思いをしているために、旧第十研に対して少なからぬ蟠りを懐いている[Ⓝキ-2-24]。一方で、「『数字落ち』は『いないもの』として扱われていたため、非友好国に入国することもできた」という遠上良太郎の言に対して「（その自由さは）羨ましい」と述べるなど、「数字落ち」の境遇にそれほど囚われていない様子も窺える[Ⓝキ-3-52･53,管推]。
十七夜栞の両親
十七夜栞の両親についての詳細は不明。佐渡侵攻事件の際に参加しなかったため「数字」を剥奪された？[Ⓒ優-5-120･121]備考
- 「数字落ち」には、元の姓に読みが似ている苗字を与えられるのが通例となっている[Ⓝメ-1-125]。
- 十師族は「数字落ち」を追放した側ではない。むしろ国防の大義名分の下に魔法師開発研究所で弄ばれた存在であり、権力者に道具として重用（重宝）されてきた存在である[Ⓝメ-2-190･191]。
- 十六夜家は、作り出された魔法師に対する嫌悪感が強い。十師族に対してはさすがに遠慮が見られるが、調整体や「数字落ち」には蔑視を隠そうとしない[Ⓝメ-2-229,Ⓝキ-1-166]。
