リアクティブ・アーマー

リアクティブ・アーマーは、「十神」魔法師が操る、身体に沿って展開する個体装甲魔法[Ⓝメ-1-2・256,Ⓝキ–]
「十神家」が旧第十研から追放され、「遠上家」となる原因となった魔法[Ⓝメ-1-256]

受けた攻撃に対応して強化されていく障壁魔法[Ⓝメ-2-279]、「攻撃に反応する装甲」というところから「リアクティブ・・・・・・・アーマー」と名付けられた[Ⓝメ-1-2・257・260]

術式はかなり複雑で、難易度が高い。「十神」以外の魔法師が真似しようとしても術式が発動しないか、発動までに長い時間を要する。「十神」の魔法師が一瞬で発動できるのは、彼らの魔法演算領域がこの魔法に最適化されている(魔法演算領域が予約されている)ためである[Ⓝキ-3-116]

敵軍の中に単身突撃するような戦い方に向いており、直接戦闘以外の使い道は無い。索敵・狙撃・トラップ解除等の諜報に応用可能なものでもない[Ⓝメ-1-80]
また、いったん発動してしまえば無敵とも言える防御力を発揮するが、長時間展開したままにしておくには向いていない[Ⓝメ-1-147]

概要

最初に展開される対物障壁魔法は平凡なものである[Ⓝメ-1-256,Ⓝキ-1-69・70]が、攻撃を受け、装甲が破られると同時に「その原因となった攻撃と同種の力」に対する抵抗力が付与されて再構築される。このため、一撃で無力化されない限り何度でも立ち上がり、戦い続けることができる[Ⓝメ-1-2・260,Ⓝキ-1-70]

たとえば遠上遼介加重系統魔法によって慣性質量を増幅した警棒で殴られた際には、シールドはいったん破れたが、次の瞬間には「運動量を増幅する魔法攻撃」に対する高い防御力を獲得して、シールドが再展開された[Ⓝメ-2-279]

また遠上茉莉花十文字克人と戦った際、克人の『防御型ファランクス』に衝突して破壊・再構築された装甲の強度は、『ファランクス』に匹敵するレベルにまで上がっていた[Ⓝキ-1-70]

最初に展開される障壁

最初の装甲は、対固体・対液体・対気体・対電磁波・耐の、5層の弱い装甲から成る[Ⓝキ-3-104]

このとき同時に、強い装甲が待機状態で準備される[Ⓝキ-3-104]

装甲の再構築

直前の障壁崩壊がトリガーとなる

装甲の再構築は、直前の障壁崩壊をトリガーとして行われる。これは『防御型ファランクス』と同じ仕組みである[Ⓝキ-1-71]

装甲の強度は指定できず、自動的に決まる

5層の弱い装甲が対応する刺激によって破られると、同時に同種の強力な装甲が展開され、あらゆる対物攻撃を防御する。その際、どの程度強度が上乗せされるかは自動的に決まり、破られた装甲を十分に上回る強度・・・・・・・・となる。術者が意識的に決めることはできないのは、装甲の再構築に要するタイムラグをなくし、術者が無防備になるのを防ぐためのものである(意識的に決めるならば、装甲のない無防備な瞬間が生まれてしまう)[Ⓝキ-3-104・105,管補]

再構築回数には上限がある

再構築回数には限界がある。このため、限界が訪れる前に敵を倒すのが「十神」の戦い方である[Ⓝメ-1-260,Ⓝキ-1-72,3-104]

魔法の終了

5層のうちどれか一つの装甲が術者の上限回数破られると、『リアクティブ・アーマー』は自動的に終了する[Ⓝキ-3-104]

術者が自ら終了することもできる[Ⓝキ-3-105]

開発の経緯

旧第十研の目的は、重要拠点と重要人物を守る魔法師の開発にあったが、十神家のこの魔法は自分自身しか守ることができないものだった。そこで、「盾」ではなく、単身敵陣へ突入する特攻兵としての使い方を想定した調整が進められたが、あまりにも多機能化した結果として装甲の再展開回数を伸ばすことができず、戦局を左右するほどの決定力が期待できるものではなくなってしまい、追放されて数字落ちエクストラとなった[Ⓝメ-2-276・277,キ-1-69・72]

ただしこの件について、十文字克人は「裏がある」と聞かされている[Ⓝキ-1-69]。詳しくは遠上家を参照のこと。

特徴

CAD不要

『リアクティブ・アーマー』は、CADに頼ることなく即時発動することができる[Ⓝメ-2-277]

超能力とは少しシステムが違う[Ⓝメ-2-277]

発動の仕方は、術者によって異なる[Ⓝメ-2-277,Ⓝキ–]

選択的透過性

『リアクティブ・アーマー』は身体に沿って形成され、術者は魔法シールドに隙間なく包まれるため、有毒ガスに対しても有効である。しかし気体を完全に遮断するとすぐに酸素不足に陥ってしまう。これを防ぐため、『リアクティブ・アーマー』のシールドは、呼吸に最適な成分比の酸素・窒素混合ガスを透過し、二酸化炭素を排出することができるようになっている。前者の透過は双方向的だが、後者の透過は排出のみである[Ⓝメ-2-277]

問題点

再構築回数が少ない

遠上茉莉花の装甲再構築回数の上限は9回である[Ⓝキ-3-104]

この数字は、克人『ファランクス』の障壁更新限度(999回)に対して、いくら何でも差がありすぎる。これについて克人は「『より強力な障壁を再構築する』というシステムに無理があるのだろう」と結論づけている[Ⓝキ-1-74・75]

強度の指定ができない

『リアクティブ・アーマー』で再構築される装甲の強度は自動的に決まり、術者による指定ができない[Ⓝキ-3-104・105]

これは術者を無防備な状態に置かないための措置であるが、この魔法の構造的な脆弱性にもなっている。もし、強い力を有する敵が、あえて装甲強度を少し上回る程度の威力の攻撃を行い続ければ、装甲の再構築回数はあっという間に上限に達する。そうなれば魔法は強制終了し、術者は無防備な姿をさらすことになってしまう[Ⓝキ-3-105]

なお、再構築回数の上限に達する前に、術者が自ら魔法を終了し、そののちに再発動すればこの問題を避けることができる[Ⓝキ-3-105]が、たとえば敵地のど真ん中にいる場合や、あるいは飽和攻撃を受けているときなど、状況によっては選択できない手段だろう[管推]

使用者による違い

遠上遼介

スタイル

遠上遼介は、「十神」の戦い方と同様、再構築回数の限界が訪れる前に敵を倒すスタイルをとっている[Ⓝメ-1-260]

発動方法

まず最初に片手を覆うだけの想子の膜(無系統のシールド)を形成し、それを踏み台にして全身を包む本格的な魔法シールドを展開する[Ⓝメ-2-277]

課題

遼介は、自身の肉体に密着する位置にシールドを形成することができない。発動の為には、地面を踏みしめている足の裏を除く身体の周りに、少なくとも3cm以上の隙間を必要とする。このため、例えば敵の放った鎖が身体に巻き付いているような状態だと、発動することができない(身体に接触しているものが液体であれば可能らしい)[Ⓝメ-2-286]

また、個体装甲のシールドは、最大で身体から30cmの位置に構築するのが限度である[Ⓝメ-2-286・287]

遠上良太郎

遠上良太郎遼介と同様、身体に固体が密着した状態での発動に制限がある[Ⓝキ-3-102]

遠上茉莉花

「十神」の完成形

遠上茉莉花超能力者に近い特性を持っており、CADを使わず、念じるだけで発動することができる。彼女の魔法演算領域には『リアクティブ・アーマー』へのショートカットと呼ぶべきものが、生まれつき形成されている。「十神」の開発目的を考えると、この仕組みはあって然るべきものである。
このためか、茉莉花は意志決定というスイッチを入れれば発動する状態で魔法演算領域が「予約」されている。これにはいちいち発動手順を踏む必要が無いという利点がある反面、決まった手順を自動的に処理するだけなので応用が利かないという問題もある[Ⓝキ-3-101・102・117,管補]

たとえば、茉莉花が初めて『リアクティブ・アーマー』を発動したとき、CADは使わず、何ら魔法的な手順を踏むこともなかった。これについて十文字克人は「超能力者と魔法師ハイブリッドのようだ」と感じる一方で、「手順を無視している以上、普通に魔法を使うよりも負荷が掛かっているはずだ」と考えている[Ⓝキ-1-79・83]

密着していても発動可能

茉莉花は良太郎遼介と違い、固体が密着した状態であっても、衣服など「自分に付随するもの」と認識されている物以外の固体を弾き飛ばして装甲のスペースを確保し、展開することができる[Ⓝキ-1-242,3-101・102]

スタイル

茉莉花は遼介とは違い、再構築回数の上限に達する前に自ら魔法を終了し、いったん別の手段で敵の攻撃を防御あるいは回避しつつ、装甲を一から・・・発動するスタイルをとっている[Ⓝキ-3-105]

遼介は「片手に想子の膜を展開する」というステップを経なければ発動できないが、茉莉花は装甲のオン・オフを瞬間的に切り替えることができる[Ⓝキ-3-242・243]。これは魔法の発動待機技術を修得したからこそできることなのかもしれないが、いずれにせよ「無防備な隙を晒す」時間は短く、自ら魔法を終了し再構築回数をリセットするスタイルのデメリットは、遼介よりも小さいものと思われる[管推]

その他

茉莉花の連続発動回数の上限は9回である[Ⓝキ-3-104]

その他

  • 遠上遼介の装甲再構築機能は、分類不能魔法である『アラビアンナイト』にも通用した[Ⓝメ-1-257]
  • 自分自身を守ることに限れば、この魔法は「十」の魔法師に相応しい強度を有している。十文字家十山家に勝るとも劣らないレベルの改造が加えられている[Ⓝメ-2-276・277]
  • 『リアクティブ・アーマー』は、シールドを展開し終えてから戦闘に突入する魔法である[Ⓝメ-2-287]
  • 装甲展開状態で人を抱えたり、物を持ったりすることはできるが、触覚が得られないために力加減が難しい[Ⓝメ-2-278]
  • 『リアクティブ・アーマー』の装甲は固体を通さないが、これは運動量消去によるものではなく、排他的物質制御によるものである。このため、装甲の外部からすれば、一切変形することのない透明な金属板の鎧を纏っている状態に近い。ゆえに、展開状態で人を抱えて力を入れすぎると危険なことになる恐れがある[Ⓝメ-2-278]
  • 術式には魔法の発動待機技術が組み込まれているが、完全にパッケージ化されているために、発動待機技術だけを取り出して他の魔法に利用することはできない[Ⓝキ-3-117・130]
  • 十文字家『ファランクス』十神家の『リアクティブ・アーマー』の間には、共通する術理が多い[Ⓝキ-3-130]
タイトルとURLをコピーしました