氷河期〈グレイシャル・エイジ〉は、司波深雪が操る、戦略級魔法に匹敵する大規模魔法[Ⓝ劣-31-2]。
『トゥマーン・ボンバ』の基幹技術である『チェイン・キャスト』を用いた、超広域冷却魔法[Ⓝ劣-31-2]。 司波達也が深雪のためだけに開発した魔法[Ⓝ劣-31-2・240]。一撃で艦隊規模の海上戦力を「壊滅」させる魔法ではなく、「無力化」する魔法であるため[Ⓝ劣-31-241]、戦略級魔法と呼ぶべきかどうかは意見が分かれるかもしれない[管推]が、達也は「完全に戦略級レベル」と述べており[Ⓝ劣-31-242]、また後に「戦略級魔法『氷河期』」と記述されている[Ⓝ劣-31-289]。
原理
『氷河期』は、振動減速系広域魔法『ニブルヘイム』を、『チェイン・キャスト』によって拡張した魔法である[Ⓝ劣-31-2・172]。
対象領域は海上で使用した場合には直径20kmほどに及ぶ。このため長距離の照準を必要とし、発動には遠隔照準を可能とする特殊な専用のCAD(『氷河期』専用特化型CAD)が用いられる[Ⓝ劣-31-2・171・172]。
司波達也が作成した起動式では、術者の負担を軽減するために範囲指定のプロセスが省かれており、照準点を中心として、投入された事象干渉力に応じた半径の円形領域が魔法の効力範囲となるよう作られている[Ⓝ劣-31-239]。 威力については、司波深雪が全力の8割の事象干渉力を投入したところ、半径10kmの氷の大地が誕生した。1隻の船を対象にするような魔法ではなく、大規模な艦隊を丸ごと閉じ込めるのに相応しい魔法といえる[Ⓝ劣-31-240・241]。作り出した氷原は、戦闘終結後、(おそらく)深雪が消滅させた。氷原は一瞬で消え、またその際周囲の海水に温度低下は見られず、むしろ氷原によって冷やされていた海水は元の温度に戻った[Ⓝ劣-31-263,管推]。
◇◇◇
戦闘終結後、氷原は深雪が一瞬で消滅させた[Ⓝ劣-31-263]が、これが『氷河期』とは別の魔法なのか、あるいは『氷河期』の一部に含まれるものなのかは不明である[管推]。
前者だとすると、深雪が私設防衛指令室のシステムを使うことなく大規模な氷原を消滅させたことに違和感があるが、この氷原は「深雪が魔法で作り出した」ものであり情報的な距離が近いはずなので、照準にシステムを必要としなかったとも考えられる(達也が初めて『質量爆散』を行使したときと同じ)[管推]。
後者だとすると、「氷原を一瞬で消失させること」「その際に周囲の海水温度が低下しないこと」「氷原によって冷やされていた海水温を元に戻すこと」の3つの要素も『氷河期』の魔法式に含められているはずである(達也がそのように設計したことになるだろう)[Ⓝ劣-31-263,管推]。
しかし、現代魔法のシステム的に、「氷原の維持のために魔法を維持し続ける」とは考えにくく、疑問が残る[管推]。
実はどちらでもなく、「達也が『再成』した」という可能性も否定できない。その方がしっくりくる部分も多いが、できるだけ隠すべき魔法を、世界中が注目している場で、あれほど大規模に行使する理由も思い当たらず、やはり疑問が残る[管推]。
使用履歴
1回目
- 日時:2097年8月4日[Ⓝ劣-31-176]
- 場所:巳焼島の東海上30km[Ⓝ劣-31-238]
- 対象:USNA海軍の駆逐艦・「ハル」[Ⓝ劣-31-238]
- 戦果:「ハル」を行動不能とした[Ⓝ劣-31-238]。
- 備考:司波深雪が全力の8割の事象干渉力を投入した結果、半径10kmの氷原が生まれた[Ⓝ劣-31-240]。
2回目
- 日時:2097年8月4日[Ⓝ劣-31-176]
- 場所:巳焼島の西海上30km[Ⓝ劣-31-241]
- 対象:USNA海軍の駆逐艦・「ロス」[Ⓝ劣-31-241]
- 戦果:「ロス」を行動不能とした[Ⓝ劣-31-241]。
- 備考:半径5kmの氷原が生まれた[Ⓝ劣-31-241]。
3回目
- 日時:2097年8月4日[Ⓝ劣-31-176]
- 場所:巳焼島から25kmの距離の海上[Ⓝ劣-31-179・241]
- 対象:USNA海軍の強襲揚陸艦・「グアム」[Ⓝ劣-31-241]
- 戦果:「グアム」を行動不能とした[Ⓝ劣-31-241]。
- 備考:半径1kmの氷原が生まれた[Ⓝ劣-31-241]。
その他
- 魔法の開発は、『海爆』と並行して進めていた[Ⓝ劣-31-101]。
- 司波達也が作成した起動式には、魔法演算領域に過剰な負荷が掛かることを防ぐリミッターが組み込まれている[Ⓝ劣-31-172]。
- 司波深雪は巳焼島事変当時、巳焼島の管理棟(巳焼島管理ビル)内の私設防衛指令室のシステムを用いることで、達也が『精霊の眼』を使って魔法を実行しているのと類似した形で『氷河期』を行使した[Ⓝ劣-31-186∼190・238]。
- 深雪が『氷河期』で見せた『チェイン・キャスト』の規模は、イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフの『トゥマーン・ボンバ』に勝っていた[Ⓝ劣-31-242]。
- ベゾブラゾフにとって『チェイン・キャスト』は『トゥマーン・ボンバ』の一部であるため、ベゾブラゾフは『氷河期』を「『トゥマーン・ボンバ』を盗用した魔法」と見なしている[Ⓝ劣-31-243]。
- 『氷河期』で作られた氷原は気象台でも民間でも観測されていたが、その後に達也が行った「宣言」のインパクトが大きすぎたため、マスコミの注目を集めることはなかった[Ⓝ劣-31-278]。