アストラル・プロジェクションは、『幽体離脱』[Ⓝ劣-28-6・33・56]もしくは『星気体投射』[Ⓝメ-4-150]と表現される魔法。
前者は肉体から分離した意識体を移動させるもの、後者は投映地点に漂う想子に干渉して想子情報体を作り上げそこに意識を乗せるものである[Ⓝメ-4-150]。
両者が似て非なるものなのか、本質的に同じものなのかについて現時点では判断がつかないため、ひとまず本項にまとめて記載することとする。
幽体離脱〈アストラル・プロジェクション〉
『幽体離脱』は、精神体を肉体の外に投射する魔法[Ⓝ劣-28-33]。幽体として肉体から脱け出す魔法[Ⓝ劣-28-52,管補,管推]。
特徴
- 肉体を抜け出す際には特有の感覚があるらしい[Ⓝ劣-28-33]。
- 幽体となるため海や山などの障碍物に妨げられることはなく、この意味で物理的な制限は無い[Ⓝ劣-28-52]。
- 移動速度については、術者が体験したことがあるスピードなら再現することができる[Ⓝ劣-28-52]。
- 幽体は肉体の形状をコピーしているが、細部までは再現されていない。したがって『幽体離脱』状態の幽体を第三者が見た場合、相手が何者なのかはっきり意識して見ない限りはシルエットしか分からない[Ⓝ劣-28-56,管補]。
- 通常は索敵用の魔法に分類されるものであり、直接戦闘に向いた魔法ではない。この状態で(受動的な能力を使うだけならともかく)能動的に魔法を行使すれば『幽体離脱』の術式を維持できなくなるのが普通であり、この術式に相当慣れた魔法師であっても正面切っての戦闘は2~3分が限度である[Ⓝ劣-28-66,管補]。
- 『幽体離脱』に関して過去に日本で行われた実験では、幽体離脱状態で魔法の威力や発動速度などの魔法技能が向上するという結果は得られていない。この実験は四葉家でも行われているが、発動速度は変わらず、威力はむしろ低下するというのが結論であった[Ⓝ劣-28-61・62]。
- 『幽体離脱』の行使時、幽体では代用の五感を再現している[Ⓝ劣-28-78]。
アレクサンダー・アークトゥルスの『幽体離脱』
2097年7月、スターズ第三隊の隊長であるアレクサンダー・アークトゥルスが『幽体離脱』を使用中に司波達也と戦闘となった[Ⓝ劣-28-6・7・33]が、その幽体は達也が経験したことが無いほどにタフだった。戦闘開始から5分が過ぎても存在感が薄れる兆候は一向に無く、また達也の『術式解体』にも耐えた(過去に達也の『術式解体』を受けた幽体は、『幽体離脱』の術式を維持できなくなっている)[Ⓝ劣-28-66,管補]。
通常、『幽体離脱』の使用時には精神体と肉体は「細い糸」でつながっている。この「糸」について、アレクサンダーの祖母は「肉体と魂をつなぐもの」と述べている。またアレクサンダーが若い頃に指導を受けた日本人の僧侶は「糸が切れると肉体に戻れなくなる」と述べている[Ⓝ劣-28-34,管補]。この「糸」の正体は、肉体から幽体へと事象干渉力を送る「通路」である可能性もあるが、本当にそうなのかはよく分からない[Ⓝ劣-28-73∼79,管推]。
達也はこの戦いにおいて、この「通路」を『術式解散』で破壊。アレクサンダーは『幽体離脱』を維持できなくなり、投影幽体を構成する想子の密度が低下していった。この希薄化は10秒前後で止まり、幽体はその直後に虚空に吸い込まれるかのように消え去った[Ⓝ劣-28-76・77]。このときアレクサンダーは「麻酔を使わずに抜歯をしたらこんな苦しみを味わうだろう、というような激痛」と、「血液同様に命に直結している『何か』が抜け出していく感覚」を感じている[Ⓝ劣-28-78]。なおアレクサンダーは死んだわけではなく、肉体に戻されたらしい[Ⓝ劣-28-77∼79,管想]。
備考
- 作中には『幽体分離』という魔法が登場するが、『幽体離脱』がこれと同じものであるならば、これは系統外魔法ということになる[Ⓝ劣-1-231,管補]。
- アレクサンダー・アークトゥルスは、「使い慣れた」とまでは言えないが制御を失敗しない程度には『幽体離脱』の経験を積んでいる[Ⓝ劣-28-33]。
- 司波達也は2097年までに、『幽体離脱』を使う魔法師との戦闘を何度か経験している[Ⓝ劣-28-66]。
- アレクサンダーとの戦いで得られた知見を元にして、達也は精神体を殺す魔法――霊子情報体支持構造 分解魔法『アストラル・ディスパージョン』を開発した[Ⓝ劣-29-166・167,30-95∼97,管補]。またこの戦いにおいて達也は崩壊した「事象干渉力の通路」から霊子波が漏れ出した様子を観測しており、これはのちの『事象干渉力霊子波理論』の発表につながった[Ⓝ劣-28-75・76,29-165,30-96,32-281]。
星気体投射〈アストラル・プロジェクション〉
『星気体投射』は、USNAの政治結社・FEHRのリーダーであるレナ・フェールが操る系統外魔法[Ⓝメ-2-141・,3-268,4-53・148]。目的の場所あるいは人物の傍に自身のアストラル投影体を出現させる魔法[Ⓝメ-2-142・157,4-148,管補]。自分の肉体の情報をコピーして作った想子情報体を可視化して、それに意識を憑依させる魔法[Ⓝメ-4-182]。
特徴
アストラル体は精神そのものではないが精神体としての特徴を色濃く持っており、アストラル体に対するダメージは精神へダイレクトに伝わるため、精神体に対する攻撃を得意とする魔女がいる場所へアストラル体を飛ばす行為は危険を伴う[Ⓝメ-4-132]。レナ・フェールの『星気体投射』
この魔法を使う時、レナ・フェールは椅子に深く腰掛けて目を閉じ、目的とする場所または人物の許に自身の意識を飛ばす[Ⓝメ-2-138,管補]。
発動時にはぼんやりと人の形をした靄が生じ、これが急速に色と輪郭を備えて人の姿に変わる(星気体)[Ⓝメ-3-268]。この投影体は、『精霊の眼』の持ち主でもないと肉体と全く区別が付かない。司波達也は「生身の身体とほとんど見分けが付かない、見事なものだった」とコメントしている[Ⓝメ-4-182・187,管補]。
言葉は思念(テレパシー)として相手の頭に響く(表層意識に届く)が、レナの「声」は肉声とまるで区別がつかないほどに明瞭である。思念のダイレクトな伝達であるため、言語化されていない感情は相応の内容に翻訳されて相手に伝わる[Ⓝメ-2-139・141,3-268,管補]。
レナは、USNAから太平洋すら超えて日本まで星気体を飛ばすことができる[Ⓝメ-2-141・157]。
レナの『星気体投射』は距離に拘わりなく、自分が良く知っている場所あるいは自分が心を許している相手の許にしか飛べないものである。これについて達也は「魔法に影響を与える距離は物理的なものより精神的な遠近にある」と述べている。レナ自身は「私のアストラル・プロジェクションは本物の遣い手のもののように、自由自在に飛び回ることはできない」と述べている[Ⓝメ-2-142・157]。
何処にでも自由に飛んでいけるという性質のものではないため、味方を助けに行くのには向いているが、隠れている敵を捜しに行くのには向いていない[Ⓝメ-8-29,管補]。
レナはこの魔法で映し出した投影体から魔法を発動することができる[Ⓝメ-4-168∼170]。

