極致拡散【きょくち-かくさん】は、気体やエネルギーを識別不能になるまで拡散し平均化する収束系統魔法。主に電磁波、音波、気流を拡散平均化する魔法。通称「極散」。「不可視フィールド」と表現されることもある[Ⓝ劣-13-258,18-226,SS-208,Ⓒ師-6-13]。
黒羽亜夜子が最も得意とする魔法。司波達也はその使い手を亜夜子以外に知らない特異な魔法[Ⓝ劣-13-189・258,㊮GB-劣2-5-3・23]。主として隠密行動に用いられる[Ⓝ劣-SS-184]。
原理・効果
- 指定領域内における任意の気体、液体、物理的なエネルギーの分布を平均化して識別できなくする[Ⓝ劣-13-189,SS-184,メ-1-207,Ⓒス-2-83,㊮GB-劣2-5-23]。光波や音波を広大な領域で混ぜ合わせ薄めて、無に等しい細波に変える[Ⓝ夜闇-1-188,Ⓒ夜闇-2-146]。反射光の光波を広い領域の光波と混ぜ合わせて姿を消す。また音波を拡散し他の音と合成して識別できない微かなノイズに変えて音を聞こえなくする[Ⓝメ-1-207]。
- 音や振動が平均化され、相手に気付かれなくなる[㊮GB-劣2-5-15]。黒羽亜夜子は自分または自分のチームが反射または放射する電磁波を瞬時に、かつ選択的に拡散平均化することで姿をほぼ完全に消し去り、闇に紛れる。音波と気流の変化を拡散平均化することで聴覚と嗅覚による探知から逃れる。また自分たちが反射する光を相手が知覚できないようにする[Ⓝ劣-13-189,SS-179・184,管補]。
- 想子波を対象に指定すれば、『キャスト・ジャミング』を無効化することもできる[Ⓝ夜闇-1-188,Ⓒ夜闇-2-144∼146]。
- 亜夜子は『極散』で透明化に近いことができる。何食わぬ顔で教室に入り、教師にも生徒にも気づかれること無く部屋の隅に立っているという芸当も可能[Ⓝ暗-1-177]。(この魔法を使用している間は)存在感が異常に希薄になる。姿が見えなくなっているわけではないが、大抵の人は彼女を視界に入れても風景の一要素としか感じない。後から顔を思い出せないどころか、そこにいたという事実を記憶している者さえほとんどいない[Ⓝ暗-2-179,管補]。亜夜子はハッとするような美女だが、(それでも)景色に溶け込み存在感が極めて希薄となる。そこにいると意識して目を向けても視認できないかもしれず、闇雲に探すだけではまず間違いなく見つけられない。実際に、上半身が隠れていない状態の亜夜子を誘酔早馬は見つけることができなかった[Ⓝキ-6-197,管補]。
特徴
『分解』との類似性
『分解』と『極散』は事象改変の方向性が似ている。物質をその構成要素に分解するということは、別の側面から見れば物質の構造を壊してその構成要素の配置を無構造状態に散乱させるということになる。『分解』は『極散』の深度を増して規模を縮小したものという見方もできる[Ⓝ劣-13-190,㊮GB-劣3-3-24]。遮断型のアクティブセンサーは無効化できない
『極致拡散』では、パッシブセンサー、または電磁波や非可聴音波を放ち侵入者から跳ね返ってきた信号を捉える反射型のアクティブセンサーならば幾らでも無効化できる。しかし赤外線や超音波を発信機から受信機へ放ち、それが遮られることで侵入者を感知する遮断型のアクティブセンサーは無効化できない(赤外線や超音波を平均化するプロセスそのものが異常として感知されてしまう)[Ⓝ劣-13-193,SS-208・209]。
バリエーション
『拡散』
『極散』を現実に意味のあるものとして使いこなすことはほとんど不可能と言って良く、一般的な魔法師はせいぜい『極散』の下位バージョンである『拡散』までしか使えない。例えば音を「平均化」する場合、声も音楽も一切が平坦なノイズになりそこに込められた意味を聞き取ることはできなくなる。だがノイズ、つまり音が発生したこと自体は隠せない。これはまだ『拡散』のレベルであって、音の強さが可聴域を下回るまで平均化する領域を広げることができてようやく『極散』のレベルとなる[Ⓝ劣-13-189,Ⓒス-2-83,㊮GB-劣2-5-23]。
『極散』のプロセス逆転魔法
『極散』のプロセスを逆転させ、広い空間に拡散しようとする音を拾い集めて意味のある音声信号に戻すこともできる。(黒羽亜夜子は)聞こえなくするほど得意ではないが、数十メートル程度の距離ならば囁き声を録音可能な状態に復元することができる[Ⓝメ-1-207]。
『電磁波撹乱』
電磁波を撹乱し識別しにくくする魔法。『極散』の下位のバリエーション[Ⓝメ-8-193]。詳しくは電磁波撹乱を参照。
黒羽亜夜子
魔法特性
- 黒羽亜夜子は事象を改変することができる領域の広さにおいて司波深雪を凌駕し、四葉随一の才能を誇っている[Ⓝ劣-13-189]。
- 得意魔法の特性上、亜夜子は空中に放出されている電磁波と音波の偏りに敏感で、既に存在している分布は極めて広い範囲(4km四方程度は余裕で範囲内)で感じ取ることができる(ただし動かない固体の配置は知覚できない)[Ⓝ劣-SS-208]。
- 光量の乏しい夜の屋外は亜夜子が最も本領を発揮できるテリトリーで、『極散』によって夜の空気に同化する。「ヨル」というコードネームは『極散』の特徴を表すものでもある[Ⓝ劣-13-189,Ⓒス-2-84]。
『極散』の修得経緯
小学生のころに司波達也は、『分解』を基にした『極散』のやり方を亜夜子に実演して見せた。亜夜子にとって『極散』は達也から教わったに等しく、達也によって黒羽亜夜子としてのアイデンティティを、四葉の魔法師としての自分自身を確立したと言って過言ではない[Ⓝ劣-13-190・191]。
2096年時点での技能レベル
達也は2096年度九校戦の会場において、『極散』を発動している亜夜子の「存在」を『精霊の目』の視界の端に捉えたが、亜夜子との物理的な距離は近いにも関わらず情報的な距離は遠かった。これは亜夜子の隠身技術の高さを示している[Ⓝ劣-13-187]。
備考
- 『極散』について、黒羽貢は「諜報向き」と評している[Ⓝ劣-13-157,SS-179]。
- 『極散』について、黒川白羽は「便利すぎて黒羽文弥の潜入スキルが向上しない」と苦言を呈している[Ⓝ暗-2-197]。
- 2096年度九校戦では赤外線、電波、音波のアクティブセンサーが大量に、そして密に配置されており(小動物しか出入りできないくらいの隙間しか無かった)、『極散』を得意とする黒羽亜夜子も会場に侵入することはできなかった[Ⓝ劣-13-188・190,SS-208・209・211,Ⓒス-2-80・82]。
- 『極散』は起動式に記述することができ、その意味では普通の魔法である[Ⓝ劣-13-189]。
- 『トゥマーン・ボンバ』の発動を『極散』で阻止することは理論的には可能である[Ⓝ劣-22-65,Ⓒ動-4-136]。
- スピンオフシリーズ『夜の帳に闇は閃く』のタイトルにおいて、「帳」は『極散』を象徴したものである[Ⓝ夜闇-1-280]。


